専門家の記事

みなさんこんにちは。


今日は以前もお伝えしました、日本炎症性腸疾患学会(JSIBD)が公開している、世界のIBD患者さんの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する最新情報をご紹介したいと思います。


このような貴重な情報をまとめて公表して下さっている、IBDの調査研究班「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班」により設立されたJAPAN IBD COVID-19 Taskforceの関係者の方々に改めて感謝致します。


今回も実際の専門的な公開情報をGコミュニティのみなさんにわかりやすくお伝えできればと思います。


1. 世界でCOVID-19と診断されたIBD患者の人数は?


2020年5月25日の時点で1302人のIBD患者さんが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断されています。この方々の詳細をまとめたものが以下のデータになります。


2. IBD患者さんのCOVID-19診断数が多い国はどこ?


最も患者数が多いのがアメリカです。続いて、スペイン、フランス、イタリア、イギリスなどが続きます。国別の増加率には違いがありますが、依然としてこれらの国々では増加傾向にあります。


3. COVID-19と診断されるIBD患者さんの年齢は?


これはIBDの発症年齢と同じような傾向で、10-30歳代が多いです。もちろん他の年代の10歳未満、40歳代、50-70歳以上のあらゆる年代の方がいらっしゃいます。そのうち60歳以上の年齢の方では入院する割合が高い状況があります。


4. IBDの疾患別に違いはあるの?


潰瘍性大腸炎の方が、入院する割合、重症化する割合そして死亡率がクローン病より高い状況があります。クローン病においても、もちろん入院率、重症化率、また死亡されている患者さんはいらっしゃいます。


5. 治療薬別の最新情報は?


やはりステロイド治療中では以前と同様に最も入院率、重症化率、死亡率が高い結果が続いています。


抗TNF製剤に関しては、免疫調節剤(チオプリン製剤)を併用せず単独使用であれば入院率、重症化率、死亡率ともに、抗TNF製剤と免疫調節剤を併用している患者さんより低くなっています。


免疫調節剤の(バイオ製剤との併用ではない)単独使用は、ステロイドの次に2番目として入院率と人工呼吸器使用率が高く、重症化リスクとして考えられます。しかし死亡率に関しては4番目であり、入院率と人工呼吸器使用率と比較するとそれほど高くはありません。


抗インテグリン製剤(日本ではエンタイビオR)はこれまで比較的安全であると言われており入院率は5番目、人工呼吸器使用率が4番目です。一方で今回死亡率が3番目とやや上昇傾向にあります。しかし患者数が少ないためこのデータをそのまま信じることは難しいです。今後の経過を慎重にみていく必要があります。


IL 12/23阻害剤(日本ではステラーラR)は比較的安全なデータとなっています。入院率が7番目、人工呼吸器使用率が6番目、死亡率が6番目です。


JAK阻害剤(日本ではゼルヤンツR)はまだ患者数が少ないため十分な評価ができませんが、あくまでも少ないデータの中では入院率は4番目、人工呼吸器使用率が3番目、死亡率が2番目です。この結果も今後の経過を注意してみていく必要があります。


以上が本日の内容です。これらの結果の解釈には慎重になることが大切です。また実際のそれぞれの患者さんに対しては個別に判断することが大切ですので、少しでも不安などありましたらぜひ主治医の先生とよくご相談して頂ければと思います。


現在は全国に発令されていた緊急事態宣言は解除されていますが、依然としてまだ日本では新型コロナウイルスの新しい患者さんが連日報告されています。


これからも引き続き可能な限り3密を避け、マスク、手洗いなど日常生活で気をつけていきましょう。


私たちは今後も引き続き、少しでも患者さん方の不安を払拭するサポートのため最新の情報を得るよう取り組んでいきます。ぜひGコミュニティのメンバー皆で一緒に乗り越えていきましょう!


【参考】http://www.jsibd.jp/pdf/corona/0603/Weekly_Summary_of_SECURE-IBD_May_29.pdf