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新しい薬ってどうやってできるの?臨床試験とは?
ジーケアの堀田です。
前回は、新しい薬ができるまでの概要を紹介させて頂きました。https://gcarecommunity.com/article/121
今回はより具体的な「臨床試験」などに関してお話できればと思います。
1 臨床試験とは?
前回お話した続きになりますが、必要な非臨床試験(ひりんしょうしけん)を通過した「くすりの候補」が実際にヒトで有効かどうかを調べる最終的な確認が臨床試験(治験(ちけん))です。
治験はGCP(Good Clinical Practice)と呼ばれる医薬品の臨床試験の実施の基準に則って実施されます。
治験する際に病院などの医療機関は、治験に協力していただく患者さんにきちんと説明をしたうえで、内容を十分に理解していただき、文書による同意を得ることが義務づけられております。
これはインフォームドコンセントと呼ばれます(病院で手術、検査をする際にも実施されておりますので、よくご存じの方も多いかと思います)。
治験の途中で参加をやめたいと思った際、いつでもストップできることも覚えておいていただけるとありがたいです。
2 治験の3つのステップとは?
治験は以下の通り3つのステップに分かれています。
Phase1(第一相)
健康な人で試験させていただき、飲んでいただいたお薬の薬物動態(薬がどのくらい吸収され、ターゲットとしている部位にどのくらいの時間で到達して、どこで分解され、排出されるのかと安全性(副作用など)をチェックする段階です。
Phase2(第二相)
実際の患者さんを対象として、有効性や安全性についてのデータが集められる2番目の段階の臨床試験です。
比較的少数の患者さんに対してPhase1試験で安全性が確認された用量の範囲内で薬を投与して,安全性と有効性,薬物動態,投与の回数や期間,投与間隔,用量(最も効果的な投与量)などなどを,段階的に調べます。
この結果が科学的に,どのタイミングでどのくらいの量を使って頂くのが安全かつ有効であるか検証できたお薬は、phase3に進みます。
Phase3(第三相)
多数の患者さんに対して,Phase2試験で得られた結果に基づく用法・用量に従って薬を
投与し,その有効性と安全性,有効であると考えられる疾患における用法・用量,副作用,ほかのくすりとの相互作用が無いか?などを,もともと使われている薬との有効性の比較やプラセボ(※)との比較により調べる段階です。
実際の治療により近づけた形で実施されます。
3. 新薬の販売後に大切なことは?
臨床試験が終了して良好な結果が得られると、製薬会社は厚生労働省に医薬品製造販売承認申請の届出を行います。
そこで試験の方法やデータについて審査し、成績の評価がなされた結果、くすりとしての価値が認められると販売が認可されます。
新薬は、発売後数年間は有効性や安全性をチェックするために市販後調査が行われます。
医療機関で多くの患者さんにその薬が使われた結果、臨床試験では発見できなかった副作用や適切な使い方や、他に見つけられた作用などに関する情報を集めます。
その集めた情報をもとに、より安全な薬の使い方の検討や、より使いやすい薬にするための改善につなげます。
別の病気の治療への使用が認められたり、次の新薬誕生へのヒントを得たりすることもあります。
※プラセボ
外観や味を治験薬とまったく同じにした偽薬のこと。有効成分は入っていないです。
偽薬(プラセボ)効果という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
プラセボ効果とは有効成分が含まれていないくすりを、本物のくすりとして患者さんに使用してもらったときに、ある程度の割合で治ってしまうことがあります。
これは先生の治療を受けていることや、くすりを飲んだという安心感が、体にひそむ自然治癒力を引き出しているとも言われています。
参考サイト
東京大学医科学研究所附属病院 TR情報室
http://www.h.ims.u-tokyo.ac.jp/tric_v1.1.1/CTbasic_1.html
日本製薬協ホームページ
http://www.jpma.or.jp/medicine/
執筆者: 堀田 伸勝(消化器専門医、医学博士)