こんにちは。消化器内科医の今井です。今回は改めてIBD患者さんが注意しておきたいインフルエンザ予防対策について整理しました。
1. IBD患者におけるインフルエンザのリスクについて
少し古いデータにはなりますが、以下は14万人の米国のデータベースの解析結果になります。
・発症リスクの増加: IBD患者は、IBDでない人と比較してインフルエンザの発症リスクが約1.54倍高いことが示されました。
・重症化のリスク: インフルエンザによる入院率は、非IBD群と比較しIBD群は約2.9倍高く、重症化しやすい傾向が確認されました。
・薬剤の影響: さまざまなIBD治療薬の中で、全身性ステロイド薬の使用のみが、インフルエンザ発症の独立したリスク因子(オッズ比 1.22)として特定されました。
(Inflamm Bowel Dis. 2019 Jan 10;25(2):369-376.)
2. ワクチン接種の重要性と注意点
最も効果的な予防策は不活化インフルエンザワクチンの年次接種です。免疫抑制療法を開始する少なくとも2週間前に接種を完了することが理想的ですが、すでに治療を開始している場合でも問題ありません。抗TNFα製剤(レミケード、ヒュミラ等)や免疫調節薬を使用している場合、健常者と比較して抗体の上昇が不十分になる可能性があるとされていますが、保護効果は期待できるため、ガイドラインでは推奨されています。
(Inflamm Bowel Dis. 2018 Apr 23;24(5):1082-1091.)
インフルエンザワクチンには「不活化ワクチン(注射)」と「生ワクチン(経鼻)」があります。免疫抑制療法(ステロイド、アザチオプリン、生物学的製剤、JAK阻害薬など)を受けている患者さんは、生ワクチン(フルミスト®など)を接種は出来ませんので、必ず接種する前に医療機関にお伝え下さい。
http://www.ibdjapan.org/patient/pdf/07.pdf
3. 日常生活での予防と発症時の対応
基本的な手指衛生に加え、十分な睡眠とバランスの良い食事が免疫力を維持するために不可欠です。
一方で、「急な発熱」「関節痛」「咳」などの症状が出始め、感染が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診してください。また、以下に感染時の注意点を示します。
・抗ウイルス薬の使用: 重症化リスクの高いIBD患者さんは、タミフルやゾフルーザなどの抗ウイルス薬による早期治療が推奨されます。
・IBD治療薬の調整: 発熱時、自己判断でIBDの薬を中断すると持病が悪化する恐れがあります。必ず主治医に連絡し、薬の継続や一時中断の指示を仰いでください。
IBDの治療は日々進歩していますが、感染症対策は変わらず治療の柱の一つです。不安な点があれば、次回の外診時にぜひ主治医にご相談ください。