こんにちは。消化器専門医の今井です。今回は2022年11月に発売開始となったリンヴォック®(ウパダシチニブ)についての紹介です。
ーー作用機序
ウパダシチニブもゼルヤンツ®(トファシチニブ)、ジセレカ錠®(フィルゴチニブ)と同様に炎症に関わるJAK(ジャック)というたんぱく質に作用する薬剤です。
JAKは炎症につながる信号を細胞内に伝え炎症を引き起こすと考えられています。ウパダシチニブはこのJAKに結合することで、炎症に関する信号を伝える仕組みを働かないようにすることで、炎症を抑えます。
特にウパダシチニブはJAK1またはJAK1/3を介するシグナル伝達を優先的に阻害することが特徴です。
ーー臨床成績
寛解導入療法に関する試験としては、従来の潰瘍性大腸炎治療(ステロイドや免疫調節薬、生物学的製剤など)のいずれかひとつ以上で効果が十分に得られなかった中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎患者を対象とした試験が行われています。
投与8週後の潰瘍性大腸炎の指標(Adapted Mayoスコア)で確認された臨床的寛解率はプラセボ群と比べて優位に高い結果となりました。
さらに寛解維持に関する効果としては、寛解導入達成後の潰瘍性大腸炎患者においてプラセボ群と比べて有意に高い臨床的寛解率を示しました。具体的には52週時点でプラセボ群は約12%に対して、ウパダシチニブ15mgで42%, 30mgで52%でした。
ーー適応
中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)となっています。
ーー服用
導入療法では、ウパダシチニブ45mgを1日1回8週間経口投与となっており、効果不十分な場合はさらに8週間投与することができます。
一方、維持療法では、ウパダシチニブ15 mgを1日1回経口投与です。また患者さんの状態に応じて30 mgを1日1回投与することも可能となっています。
1日1回投与で注射が必要ない錠剤の剤形となっており、その服用のしやすさも特徴と言えると思います。
一方、ウパダシチニブは他の潰瘍性大腸炎の薬剤と同様に副作用が出ることもあるので注意が必要です。主な副作用としては帯状疱疹、肺炎などがあります。その他、肝機能障害や腎機能障害の報告もあります。
また服用により免疫の働きが低下し、感染症にかかりやすくなる可能性もあります。普段から手洗いやうがいなどを心がけ予防に努めましょう。しかし、すでに関節リウマチでは以前から使用されている薬であり、安全性に関するデータは蓄積されている薬剤でもあります。
ーーおわりに
従来の同じ作用機序ではトファシチニブという薬がありました。今回のウパダシチニブやフィルゴチニブの登場により潰瘍性大腸炎患者さんの治療選択肢がさらに増えました。
最近の研究では、JAK阻害剤の中でも別のJAK阻害剤に切り替えることで治療効果を発揮するという報告もあり、今後の研究に注目です。
それぞれの薬剤に特徴がありますので、主治医の先生と相談しながら最適な治療を選択していきましょう。