専門家の記事

こんにちは、消化器内科医の今井と申します。この度、フランスのパリで開催された学会の参加報告を書かせてもらいます。


cell, science, natureという三大科学雑誌をご存じかもしれませんが、今回そのうちの一つであるcell pressが開催するcell symposiaという学会で日頃の研究を発表させて頂く機会を頂きました。今回の学会テーマは腸内細菌であり、欧米の各施設より最新の研究が発表されとても刺激的なものでした。中でも、米国ユタ大学は、1型糖尿病という遺伝性と思われていた病気が小児期のほんの一部の期間の抗生剤使用による腸内細菌の乱れが原因ではないかと報告していて、その理論立ったデータは鳥肌が出るほどでした。また、IBD関連でも、Kp2という一部のクレブシエラという菌が非常に強い炎症を起こす機能を持っており、IBDの病態に関与していると考えているドイツの研究施設があり、現在、その菌を腸内から選択的に排除する新しい治療を開発中であるとのことでした。今はまだ研究段階ですが、間違いなく近い将来、疾患特異的な腸内の悪玉菌のみをターゲットにして治療を行っていく新時代が来るのではないかと思います。そうすることで、従来の治療薬の効果が何倍も増強されるといったことが本当に実現するかもしれません。とても期待できると信じています。


また、実は私は初めてパリに訪れました。趣のある街並み、短い夏を思いっきり楽しむようにテラス席でビールを飲む現地の人々、美術館の数々。とても良い思い出となりました。