専門家の記事

こんにちは、ジーケアの堀田です。


今回は潰瘍性大腸炎の治療に関して学んでいきたいと思います。ここ数年は潰瘍性大腸炎の治療において大きな進歩があり、2016年以降は毎年新薬が発売されています。


そのため患者さんの治療の選択肢が広がりとても好ましい状況だと思います。


潰瘍性大腸炎は適切な治療を継続することで安定した期間を長く保つことが期待できますので、ぜひ主治医の先生と日々の治療内容をよく相談し、納得感を持って治療を続けていきましょう。



(1) 潰瘍性大腸炎の治療の原則

治療方法の選択は、病気の重症度(病状の強さ)と罹患範囲(りかんはんい)(大腸の炎症の範囲)で決まります。


重症度は病状が軽いものから順に軽症、中等症、重症に分けられます。


また罹患範囲は大腸の全てに炎症が及ぶ全大腸炎型、左側のある一定の部位まで炎症が及ぶ左側大腸炎型、大腸の出口の近辺のみに炎症が留まっている直腸炎型に分けられます。


私たち医師はこれらの組み合わせから、患者さんに使用する治療薬の種類を決めています。


その際には治療方針決定の基になる治療指針やガイドラインというものがベースになります。これらは過去に研究として実際の患者さんに治療薬を使用して効果が示された結果がまとめられたものです。


そして実際に治療を十分に行っても病状が改善しない場合には、手術治療が必要になる場合もあります。その時には全ての大腸を取り出したり、人工肛門が必要になる、といった大きな手術になることも珍しくありません。



(2) 治療薬にはどんな種類があるの?

治療薬は大きく分けて、飲み薬、肛門から使う薬、点滴や注射で使う薬の3つに分けられます。


このような使用法をする薬には5-ASA製剤、ステロイド製剤、免疫調節剤、抗TNFα製剤と呼ばれるものなどがあります。


これらの薬のうち、最も大切な薬の1つが5-ASA製剤といわれる薬です。これまで5-ASA製剤が潰瘍性大腸炎が悪化している時に安定させる治療(寛解導入(かんかいどうにゅう)といいます)と安定している時期(寛解期(かんかいき))の両方に重要であることが示されています。


具体的な名前としてはペンタサ、サラゾピリン、アサコール、リアルダなどがあります。これらは飲み薬と肛門から使う薬の両方があり患者さんの病気の重症度と罹患範囲で使い分けていきます。


それでは例を挙げてみましょう。例えば「軽症」で「直腸炎型」の患者さんには「ペンタサ」の「肛門から使う薬」を使います。また「中等症」で「全大腸炎型」の患者さんには、「リアルダ」という「飲み薬」を使うことがあります。


実際にはこれらの組み合わせを個々の患者さんの病状によりさらに使い分けていきますが、説明すると長くなってしまうのでまた次回詳しくご紹介したいと思います。



(3) 新薬の紹介

近年は2016年以降に毎年新薬が発売されていますが、それぞれの新薬を適切に使い分けることが大切です。


それによりこれまでの治療で改善が得られなかった患者さんの病状が改善し、手術治療しか選択肢がなかった状況から手術を防ぐことができた方も実際にいらっしゃいます。


このような新薬の例としては、それぞれ2017年以降に治療薬として承認を受けたシンポニー、ゼルヤンツ、エンタイビオという薬があります。これらの薬は新しい治療薬であるため、まだ一般の消化器の先生方だけでなく、IBDの専門家の先生方でも十分な使用経験がないことも珍しくありません。


私自身はこれらの治療薬の使用経験があり、また製薬企業の方々から最新の情報を頂くことができる環境にもありますので、次回以降でそれぞれの薬の詳しい内容をご紹介していきたいと思います。


それにより患者さん方が、現在の主治医の先生と日々の治療内容を相談して決定する際の助けになれば幸いです。



執筆者:堀田 伸勝(消化器専門医・医学博士)