専門家の記事

こんにちは、ジーケアの堀田です。

今回はクローン病の治療に関して学んでいきたいと思います。



(1) クローン病治療の原則

クローン病は長い期間における「慢性の炎症」が続くことで、腸の通りが狭くなる「狭窄(きょうさく)」や腸に孔が開いてしまう「瘻孔(ろうこう)」や膿(うみ)がたまる「膿瘍(のうよう)」という状態を作ってしまう病気です。


このような状態になってしまうと飲み薬や点滴などの治療では良くならず、手術が必要になってしまいます。


クローン病の患者さんは、診断されてから10年間でこのような手術が必要になってしまう方が約50%いるといわれています。さらに一生の間だと約80%の方が手術が必要になってしまうといわれるくらい、残念ながら手術を避けることが難しい病気です。


しかしその裏返しとしては、一生の間でもある一定数の患者さんは手術が不要であったと考えることができます。


このような患者さんによく共通することは、炎症を押さえる治療を地道に継続して、安定した状態である「寛解(かんかい)期」を長い間保つことができている方ということです。


そのため飲み薬や点滴、注射治療だけでなく、栄養療法なども組み合わせた「適切で総合的な治療」を、中断することなくしっかりと継続していくことがとても大切です。



(2) クローン病の治療方法はどうやって決まるの?

治療方法にはいくつかの種類がありますが、実際には①病気の型(炎症や潰瘍などの病変の場所)、②重症度(病状の強さ)、③合併症(がっぺいしょう)(狭窄や瘻孔などの有無)を基に、個々の患者さんの状況に応じて決めていきます。


例えば「クローン病小腸型」の方で「軽症」で潰瘍がある方で狭窄や瘻孔などの合併症がない患者さんは、ペンタサなどの5-ASA製剤やエレンタールなどの栄養療法を行うことが多いです。


またお腹の中に膿瘍がみられたり、肛門近くに痔瘻がある方は抗生物質の治療と手術の両方が必要になることがあります。



(3) 治療薬にはどんな種類があるの?

治療薬は大きく分けて以下の4つに分けられます。


①栄養療法;エレンタールという成分栄養剤などを用いた経腸栄養療法と状態が悪い時に点滴で用いる経静脈栄養法があります。


②薬物療法;5-ASA製剤、ステロイド製剤、免疫調節剤、抗TNFα製剤等があります。また2017年からクローン病の治療薬として認められたステラーラという薬があります。これはインターロイキンという炎症に関わる物質を標的にした新しい薬です。


③内視鏡治療;クローン病の合併症でよくみられる狭窄に対して、内視鏡を用いてバルーンという風船のようなものを用いて拡げる治療です。このような内視鏡を用いた治療が可能になることで、手術をせずに済むことができるようになってきました。


④手術治療;膿瘍や瘻孔などの状況が生じた時に手術で膿を除去したり、腸の一部などを切除することで治療を行います。


このようにクローン病の治療方法は、①病気の型(炎症や潰瘍などの病変の場所)、②重症度(病状の強さ)、③合併症(がっぺいしょう)(狭窄や瘻孔などの有無)などをまずしっかりと評価することが大切になります。


その上で個々の患者さんの状況に応じた治療方法を決定することが必要です。


さらに実際に治療を行う場合には、特に狭窄に対する内視鏡治療や様々な状況で必要になる手術治療との組み合わせや、それぞれの治療時期の判断など総合的な対応が求められます。


そのため実際の医療現場では、状態が悪化した場合は特に、可能であればIBDの専門家の判断を仰ぐことが望ましいと思います。


そうすることで適切な治療を、適切なタイミングで受けることが可能となります。


ぜひ患者さんの皆さまは主治医の先生とよく相談をして頂ければと思います。