こんにちは。消化器専門医の今井です。IBD領域では最近新薬の発売が続いていますので、一つずつ記事の形で紹介していきたいと思います。
まずは2022年3月に発売されたフィルゴチニブ(ジセレカ錠)についてです。
ーー作用機序
JAK(ジャック)は炎症に関わると考えられるタンパク質で、炎症につながる信号を細胞内に伝え炎症を引き起こすと考えられています。ジセレカ錠はこのJAKに結合し、細胞内への信号を抑えることで炎症を抑える薬剤です。
すでに発売されているゼルヤンツ(トファシチニブ)はJAK1~3を阻害するのに対し、フィルゴチニブはJAK1を強く抑えるため副作用が起こりにくい可能性があると考えられています。
しかし、まだ使用データが少ないため、今後有効性とともに安全性についてもデータの蓄積が期待されます。
ーーフィルゴチニブの臨床試験結果
生物学的製剤による治療経験のない潰瘍性大腸炎患者さんを対象としたフィルゴチニブの寛解導入効果を検証した試験では、フィルゴチニブ200mgがプラセボ群と比べて優位に寛解導入患者の割合が高い結果となりました。
一方、生物学的製剤で効果不十分または不耐容な潰瘍性大腸炎患者さんを対象とした寛解導入試験では、グローバルデータでは、フィルゴチニブ200mg1日1回投与10週時の寛解達成した患者割合が200mgとプラセボ群で統計学的な有意差が確認されました。
さらに寛解維持率を検証した試験では、寛解維持患者の割合はフィルゴチニブ200mg投与及び100mg投与群はプラセボ群と比べて有意に高い結果となりました。
ーー適応
過去の治療において、ステロイドや免疫抑制剤なども含め、既存治療で効果が不十分な中等症から重症の患者さんが適応となり、寛解導入、寛解維持療法の両方に使える形となります。
ーー服用について
通常、200mg錠1錠を1日1回服用。また維持療法では患者さんの状況に応じて100mgを1日1回投与可能となっています。
また投与開始後10週を目安として効果の有無を判定し、臨床症状や内視鏡等で治療反応が得られない場合は他の治療法への切り替えを考慮することと添付文書に記載されています。
なお感染リスク増加が予想されることから、TNFα阻害剤やインテグリン阻害剤、インターロイキン阻害剤等の生物学的製剤や他のJAK阻害剤、タクロリムス等の免疫を抑制する薬剤との併用はしないこととされています。
さらに動物を用いた実験で催奇形性(内臓及び骨格奇形)がみられたことから妊婦や妊娠している可能性のある女性への使用は禁忌となっています。
重要な副作用として、帯状疱疹と肺炎などの感染症があり、注意が必要です。
ーーおわりに
以上フィルゴチニブ(ジセレカ錠)について紹介しました。潰瘍性大腸炎患者さんにとって新たなJAK阻害剤の選択肢ができたことは非常に良いことと思います。
主治医の先生と相談しながらぜひご自身に合った治療を選択していただければと思います。