患者体験談

みくろん@クローン病さんに体験談をご執筆いただきました。結婚直後のクローン病診断経緯や、仕事の両立、秀逸な食生活の工夫などについての記述は大変参考になると思います。またポジティブな考え方、生き方を感じ取って頂けましたらと思います。
ジーケアスタッフ
――診断の経緯
診断前は腹痛や血便などの自覚症状はなく、便秘がちなことが多少気になっていた程度でした。消化器科受診のきっかけは突発的な高熱が出たことでした。
かかりつけの内科クリニックでは熱の原因が特定できず、他に気になる症状と言えば便秘くらいだったため、念のためにと勧められた消化器科で検便をして便潜血陽性となり、初めて大腸内視鏡検査を受けることになったのでした。
内視鏡の結果、「腸が外から何かに圧迫されているようだ。位置的に子宮など婦人科の疾病が考えられる」とのことで腸管子宮内膜症を疑われ、総合病院の婦人科を紹介してもらうことになりました。
そこでひと通りの婦人科の検査と骨盤内MRIを行いましたが、結局「何か」の正体は分からず…。熱はすぐに下がり便秘の程度も日常生活で困るほどではなかったため、ひとまず経過観察となりました。
その後徐々に便秘が悪化していき、1年が経った頃、便意はあるが便が出せない状況が続き、次第に腹痛や粘血便を伴うようになってきました。
いよいよ日常生活にも支障が出始めたため、子宮内膜症外来のある大学病院を受診(この時は子宮内膜症の疑いということしか頭になかったため…)。
しかし、ここでも「婦人科的には異常なし」との所見で、やはり婦人科ではなく消化器の問題だろうということで消化器内科へ転科。検査入院をして、再びの大腸内視鏡とMRIに加え、注腸造影や小腸カプセル内視鏡、胃カメラなどの検査を受けました。
注腸造影で直腸の狭窄が分かり、MRIで回盲部に瘻孔らしき影が認められ、ここで初めてクローン病の可能性が浮上してきたものの、大腸内視鏡で腸壁に典型的な症状が見られなかったということで、確定診断には至りませんでした。
しばらく消化器内科と大腸・肛門外科を行ったり来たりしてどうすべきか相談していましたが、診断がつかないことには埒が明かず…。それまで「クローン病」などという病名は聞いたこともなかったので、改めて自分でもネットで色々調べてみたところ、自分の症状はクローン病に当てはまるように思えたため(少なくとも子宮内膜症よりは…)、IBDの専門医がいる病院を紹介してもらうことに決めました。
転院したら、初診で即クローン病の確定診断となり、今までかけてきた時間と労力は何だったんだ…と思いつつも、やっと病名が付いたことにほっとしたのを覚えています。
狭窄と瘻孔が進行していたため、診断と同時にすぐに手術を勧められました。当時結婚したばかりだったこともあり、「妊娠・出産を考えるなら悪い所は切除して腸を綺麗にしておいたほうが良い」との主治医の言葉で迷いなく手術を選択しました。
手術後は内服と食事管理のみでうまく寛解をキープできています。
――仕事との両立
仕事はデスクワークが中心で、職場自体非常にホワイトで残業も少なく、病気とも両立のしやすい環境です。手術の際には2ヶ月弱休職することになりましたが、以降は有給休暇を利用して1~2ヶ月に1回の通院で済んでいます。
普段気をつけていることは、いわゆる“報連相”をしっかり行うということ。社会人としてごく当たり前のことですが、持病を抱える私たちにとっては特に大切なことだと思っていて、クローン病であることも診断がついてすぐに部長と直属の上司に報告しました。
私たちは健康な方に比べ、どうしても通院で休んだり急な体調不良などで仕事に穴をあける可能性が高く、それは職場にとってある意味リスクにもなり得ます。病気の特徴や自分の状態を上司や同僚にきちんと伝えておくことは、そうしたリスクに備えるための“義務”であり、義務を果たしてはじめて“権利=理解・サポート”が得られるのだと思うからです。
休む時にはしっかり休み、元気に働ける時には休んだ分を取り戻すくらいの意欲で一生懸命働く!そんな風に、クローン病であることを逆に仕事のモチベーションにできるような、メリハリのある働き方をしていきたいですね。
もうひとつ、ちょっとした悩みとして、宴会や食事に行く際の食べ物の心配は私たちIBD患者にとって避けては通れぬ道…。私の場合は、席が近くなった人には持病で食事制限がある旨正直に伝えて失礼のないよう気をつけたり、仲の良い先輩や同僚にはあらかじめ病気のことを伝えておいて、お店選びなど配慮してもらえるような関係作りを心がけています。
――食事の工夫
クローン病の診断を受けてから生活の中で最も大きく変わったのが食事です。発症前は食にあまりこだわりはなかったのですが、クローン病の診断を受け、食事指導を受けてから食事管理に対する意識が大きく変わりました。
毎日の献立は主に通勤時間を利用して考えています。大体3~5日分の献立を一度に決めて献立アプリに保存しています。アプリでレシピの保存や食材管理も行っていて、家に帰ったらすぐに食事の仕度に取りかかれるようにしています。
食材の調達は、冷凍食品やストック類は主に生協の宅配で、その他の生鮮食品は帰宅途中にスーパーで買うことが多いです。
食事の内容としては、牛肉、豚肉、鰻、辛いものは消化器症状(腹痛・下痢)が出るので控えていますが、それ以外は脂質の摂取量に気をつけながら様々な食材を取り入れるようにしています。鶏肉や魚は元々好きでしたが、病気になってからますます美味しく食べられるようになりました。今は小腸・大腸ともに狭窄のない状態をキープできているので、食物繊維が豊富な野菜なども積極的に摂取しています。
家族との食事に関しては、夫婦で食の趣味が合うことに本当に助けられています。私に合わせた食事内容でも喜んで一緒に食べてくれるので、夫の分を別に用意しなければ…というプレッシャーもなくとても気が楽です(笑)
また、記録を兼ねTwitterに食事内容をアップするようになってから、他の患者さんがそれを見て反応をくださるのが嬉しく、毎日料理をする上で良いモチベーションになっています。
外食では基本的に和食のお店を選んでいます。夫婦揃って旅行が好きで、車で遠出することが多いのですが、どこでも少し調べればクローン病でも安心して食べられるメニューのあるお店はいくらでも見つかるので、旅行先選びで苦労することもほとんどありません。
旅館などに泊まる際には食事制限のことを細かく伝えるようにしています。すると、油を控えめに調理してくれたり、代わりのメニューを用意してくれるなど、親切に対応してくださるところばかりで、食事の時間は毎度感謝と感動の嵐です…!
――IBD患者さんやそのご家族へのメッセージ
クローン病だからと言って食の楽しみを諦める必要は全くない!というのが私の持論です。逆に私はクローン病になったおかげで食に対する興味が広がり、新しい食材にチャレンジしたり、油を使わない調理を工夫してみたり、試行錯誤しながら日々楽しく食生活を送れるようになりました。
もちろん、狭窄があったり食べると腹痛が起きてしまったりして避けた方が良い「NG食」は人それぞれにあると思います。私も先に述べた牛肉や豚肉などがそうで、これらはきっと今後もう口にすることはないでしょう…(腸に負担をかけて再燃リスクを上げるようなことは絶対にしたくないため)。
それでも全然平気です!私たちでも安心して食べられる美味しいものは他にもたくさんあるので!今は、Twitterを通してそうした「美味しいものたち」をシェアし合えるのが一番の喜びになっています。IBDの皆で一緒に食を楽しみましょう!
また私は、病気を変に隠したりせず、ある程度オープンにしてしまうこともありだと思っています。身近な人に知ってもらっていると、いざという時に助けてもらえます。
例えば私自身の最近の出来事で言えば、職場に病気のことを伝えてあったおかげで、コロナ禍において優先的にテレワークをさせてもらえるということがありました。免疫抑制剤服用者であることを配慮しての部長からの提案でした。
もし病気のことをあらかじめ伝えていなかったら、業務上テレワークが難しい部署ということもあり、自分からテレワークをしたいと申し出ることはできなかったと思います。
感染リスクを恐れながらの通勤は精神的ストレスが大きかったため、テレワークになってからはだいぶ気持ちが楽になりました。
仕事の上でもプライベートでも、勇気を持って病気を打ち明けてみることは、クローン病と上手く付き合っていくための1つの方法だと私は思います。