患者体験談

なちさんに母親体験談をご寄稿いただきました。患者さんは患者さんの、母親は母親の悩みがあると思います。診断の経緯から治療決定、現在に至るまでの気持ちや食事の工夫まで詳細をご記載いただきました。患者さんにもご両親にもぜひ多くの方に読んでいただけましたらと思います。
ジーケアスタッフ
ーー診断の経緯
娘が中学校3年生の時に発症しました。当時娘はクラブ活動で忙しかったため、睡眠時間も短く食事の時間も限られているような生活でした。そんなある日、異常な口内炎ができ口の中の全てにどんどん広がり水を飲むのも痛がるような状況になりました。
その後発熱や結節性紅斑などの症状も出てきました。ヘルペスや口内炎と言われましたが良くならず、口腔外科、耳鼻咽喉科にも紹介されましたが原因がわからず様子見の状態が続きました。
次に市民病院の小児科を紹介され検査入院しましたが、炎症性腸疾患が疑われると言われたものの確定診断には至りませんでした。そして小児IBD領域の権威の先生がおられる大学病院に転院したところクローン病の確定診断となりました。
診断がついた時、体調不良の原因がわかった喜びと難病だったという深い悲しみが一緒にやってきました。診断がつき今後のことを娘と話しあい、お母さんは食事作りを頑張るから娘はお薬(ヒュミラ)とエレンタールを飲むことを頑張ると約束しました。
ーー診断直後の治療
診断直後は結節性紅斑や痔瘻の症状も出ていましたが、主治医の指示で絶食を行うとみるみる症状が改善し本当に驚きました。
そしてエレンタールが始まり、主治医から「これがちゃんと飲めるかどうかで病気との付き合い方が変わる」と言われ、美味しくないことは知っていたので娘が飲めなかったらどうしようと不安でしたが、娘が初めてエレンタールを飲んだ時「思ったより不味くない、これなら飲める」と言ってくれたので心底ほっとしました。
症状が一通り落ち着いた後に、今後の治療をどうするのかについて主治医と話しました。「効果が比較的弱い薬剤の投与から始める方法もあるが、現在は治療強度の高い生物学的製剤などを早期に投与するトップダウンの方法が主流になってきている」と助言を受け色々考えました。
同じ病室にいた小さな子を持つ親御さんから、「現時点で生物学的製剤を投与してもこの先どうなるかわからないし副作用もわからない」という話も聞きました。不安でしたが最終的には、娘も先生のいう通りにすると言ったこともありヒュミラの投与が始まり症状は安定しました。
レミケードも選択肢ではありましたが、病院に行かないといけないこと、同時に他の薬剤も飲まなければならないこともありヒュミラを選択しました。主治医の指示で症状がコントロールできるようになったのでIBDに精通している現在の主治医をとても信頼しています。
ーー退院後の食事の対応
退院当初は何を作ったら良いかわかりませんでした。そこで入院中の献立を取っておいて娘に美味しかったものに印をつけてもらい病院にいった時に印のついたレシピを管理栄養士に教えてもらいました。病院で出ていたものを作ったら間違いないと思ったのです。その後は様々なIBDのレシピ本を読みながら学んでいきました。
ーー娘の好きな洋食
娘は今どきの子ということもあり和食よりも洋食が好みです。「IBDだと和食しか食べられない、美味しいものが食べられない」という概念が悔しく、クローン病でも美味しいものを食べられる!娘の喜ぶ顔が見たい!との思いで積極的に洋食を作っています。(Twitterの「#IBD洋食部」にいろいろupさせて頂いています)
IBD用のレシピではなくても、牛豚肉を鶏肉に変えノンオイルで作れる料理はたくさんあります。鶏挽肉が好きなので挽肉レパートリーも増えました。今は狭窄はないので野菜をできるだけ使おうと思っています。トマトが好きなので面倒ですが毎回皮と種を取って出します。白菜やキャベツは煮ると柔らかくなるので良く料理に使っていて娘もキャベツを食べると便の調子が良いと言います。
調味料も駆使していてデミグラスソース(予想外に低脂質)やケチャップ、低脂質マヨネーズ、オイスターソース、ナンプラー、マスタード、スイートチリソース、甜麺醤、昆布茶、ハーブ等も使います。調味料を工夫しながら様々な洋食を作っています。
病気になるまでは、娘が好きだった唐揚げやハンバーグばかり作っていたので、娘からも「病気になってから料理のレパートリー増えたし食べられる食材も増えたよね!。」と嬉しいことも言われています。
もともと食物アレルギーがありましたが、先日、初めてアナフィラキシーを経験しました。またひとつ凹みましたが、これも現実。しっかりと受け止めて細心の注意を払い、美味しい食事を作っていきたいと思っています。
ーーエレンタール
クローン病の診断を受けて以降、娘はエレンタールを飲み続けています。1日3本、休みの日は2本になることもあります。現在のフレーバーのローテーションは、グレープフルーツ、青リンゴ、ヨーグルトで、お風呂上がりにはオレンジフレーバーを好んで飲んでいます。
娘は学校でもエレンタール を飲んでいます。「エレンタールがないと不安」というくらい娘にとってお守りがわりになっているようです。美味しくないエレンタールを飲む姿に私は毎日感心しています。
ーー娘への思い
親なのですごく娘が心配になりますが、娘は難病を抱えているという扱いをされるのを嫌がります。なので距離感が難しい時もありますが、「お母さんは再燃を心配しているから何か異変があったら必ず言ってね」と伝えています。
発病した時に主治医から「親は病気の子を過保護にしがちだけど過保護は良くない」と言われたこともあり表面上では普通の子育てを心がけています。
また娘が将来どのような職につくかはわかりませんが、病気を理由に働けなくなったり、病気が理由で何かができなくなったり、拒否される、そしてそれによって娘が傷つく姿は見たくありません。難病を持つ方でもやりたいことが実現できるような社会になって欲しいと思います。
もしも将来娘が手術になった時にはそばに居てあげたい。一人ぼっちにさせたくない。どうかその時は優しい誰かと一緒にいて欲しい。私ももういい歳なので最近はそんなことばかり考えてしまっています…病気を持っていても幸せな人生を歩んで欲しいと心の底から願っています。