患者体験談

今回はイベント等でもコラボさせていただくことの多い大阪IBD布谷さんの体験談です。主治医の選び方、セカンドオピニオン、診察時間の話などなど、クローン病と長年付き合ってこられ、多くの患者さんと接点を持たれてきた布谷さんならではの知恵が満載です。ぜひご一読ください。  グッテスタッフ



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私は、クローン病患者として40年あまり、入院は20回以上、手術は開腹3回、痔瘻手術2回を経験している。クローン病と潰瘍性大腸炎の患者会「大阪IBD」会長も25年させて頂いた。


治療はレミケード・ヒュミラのあと、現在は他疾患もあるためステロイド9mgで、エレンタールは35年飲み続け、計算したら4.5万パック飲んでいた。


そして、患者仲間と「エレンタールってどうよ?」という冊子まで作成した(IBDネットワークHP掲載https://ibdnetwork.org/2022/06/2108/にて無料ダウンロード可)。


長い年月の間に、私は多くの「患者の知恵」を頂いた。その知恵を、私の経験談も踏まえて、「医療とのお付き合い」に絞って記したいと思いペンをとった。


患者は、元気な状態から、いきなりIBDになり、真っ白な状況からのスタートとなる。


患者は、医療に関しては全くの素人!患者も知恵を使って、医療との良いお付き合いをすることは大切なことだと思う。


ーーお医者さん選びが9割


日本の医療は素晴らしい、ドンドン進んでいる。


だが、医療サイドは大変だ。医療が進化するほど深化していき、勉強も大変だ。必然的に専門化が進んでいる。


「消化器科」と言っても多種多様。食道に始まり、胃、十二指腸、肝臓、胆嚢、膵臓、小腸、大腸、肛門とあり、さらにIBDをはじめ病気の種類も多彩で、それぞれに専門医がおられる状況下にある。医療の細分化だ。


各専門医の知識は深い。経験値も高い。最新医療に明るい。イレギュラー案件


でも対処の仕方を知っている。とても有難い存在だ。


長い療養生活を考えると、「専門医に診て頂く優位性」は計り知れない。例え遠方でも通いたいところだ。勿論、近くの医師との連携作戦もアリと思われる。


患者は、「お医者選び9割」で、人生の帰趨を決めるとさえ思う。


私にとって、専門医にかかって、実際に良かったことは数多いが、特に挙げるとすると、「エレンタールを継続的に飲めるようになった」ことで、人生が開けたことだ(当時はエレンタールしか治療がなかった)。


そして、専門医の先生にしっかり手術して頂いた後、今お世話になっている専門医に「イレギュラーな症状でも解決策を見つけてくださること」が大きく、社会生活を途切れることなる続けることが出来た。


ーーその専門医はどこにいるのだろうか


色々な探し方がある。アナログ患者会に尋ねるのが、実際の医療状況を体感しているので、現実的だと思われる。


ネット検索も有力だ。「この先生はどうかな」と思ったとき、その先生のお名前でネット検索する。その先生の論文などが出てくる。それがIBD関連ならGOかもしれないし、肝臓ばかりの研究なら、やめておいた方が無難かもしれない。


それともう一つ、CCFJ(日本炎症性腸疾患協会http://ccfj.jp/)の診療医リストも心強い存在だ。


CCFJは、IBD専門医を中心とした集団組織で、IBD患者の為、医療講演会の開催やIBD NEWSの情報発信など、IBD患者の為に動いて頂いている有り難い特定非営利活動法人である。


ーーセカンドオピニオンについて考えてみる


私は、セカンドオピニオン推進派だ。勿論、今お世話になり、一生懸命に診て頂いている先生との関係も大切に考えたい。ジレンマだ。


患者が病院に行くのは、自分の病状の改善のためであり、医療関係者との人間関係構築のためではない。優しい人ほど、逆転現象が起きている時がみられる。


自身の医療に自信のある医師なら、セカンドオピニオンは喜んで受け入れるはずである。自分の医療の確かさを証明できるし、例え、それが違っても「治療の選択肢」と捉まえると思われる。


医療の目的は、患者と医療関係者が一体となって、「患者の治療」を目指すことであり、セカンドオピニオンで機嫌が悪くなる医師は、長い目で見ると離れた方が良いのかもしれない。


昔は「セカンドオピニオン」の言葉もなく、かつて僕は、心配する両親が見つけてくれた名医に診て頂くため、その時の主治医に「親戚の医師がどうしても診たい」と嘘をついて、資料をお借りした。


この作戦は大当たりで、これまで数年間の「原因不明」から、「クローン病」の確定診断を頂いた。全く同じレントゲン等の資料からの診断である。医師の技量差・知識差の大きさを痛感した出来事でもあった。


ーー病院について考えてみる


私は、病院ではなく、まず医師を選択基準の中心に考えている。立派な病院が患者を良くしてくれるのではなく(施設は良いが)、治療は医師にして頂いている。


病院は、いくつかに分類される。


大学病院は、難治性の時のよりどころで、頼りになる存在だ。ただ、大学は、「診療」と「研究」と「教育」を兼ね備えたピラミッド型巨大組織だ。白い巨塔の財前教授の回診があるかもしれない(山崎豊子の名著より)。患者個人には、場合により冷たいかもしれないが、それは組織的には致し方ないと割り切っている。


IBD専門医のいる総合病院は、患者にとって狙い目だと思う。IBD専門医との深く長い関係が築きやすく、悪くなって入院したら、IBD専門医がいるから安心だ。IBD患者にとって良いことずくめに感じる。


最近、大都会では、IBDをメインに診て頂けるクリニックが増えてきた。何より、土曜日診療や悪くなった時の即時対応など機動性に優れる。入院は出来ないが、提携病院がしっかりしていれば、何とかなる。


私の40年あまりの病院歴と一言感想を記してみよう。


①近所の胃腸科クリニック➡原因不明「昔はクローン病の認知が浅かった」


②近所の総合病院➡原因不明「初期のクローン病は発見が難しい様だ」


③近所の大学病院➡原因不明「検査ばかりで辛いだけの悪印象を残し退院」


④やや近所の総合病院➡名医によりクローン病を診断「医師の実力差を痛感」

➡名医であったが、専門医でないため、本格治療(当時はエレンタール)は採用せず。


⑤東京の総合病院➡当時、数少ない専門医を大阪から遠征して受診し入院。

当時の最高レベル「エレンタール」の治療を習慣化できた。


⑥横浜と大阪の総合病院➡外科の専門医に手術を計3回して頂く

クローン病独特のトラブルが発生した(発熱続く)が適切に対処頂く、専門医は心強い。


⑦大阪のIBD専門クリニック➡経験豊富・研究熱心・親切丁寧・熱意満載の専門医に診て頂き、クローン病は安定飛行

現在に至る


ーー診察時間は勝負の時間


お医者さんを含め、医療関係者は忙しい。人気のある医師ほど待ち時間も長い。貴重な診察時間は、最大限に有効活用したい。私は、以下の方法を推奨したい。


紙に、箇条書きに、短めに、先生に伝えたい項目「病状の経過(特に、変化のあったこと)」「治療方針や将来の方向」「お薬のこと」などを書いておく。そして、先生用、コピーして自分用も用意して、まずその紙を先生にみて頂く。


先生は賢い。文面をみれば、その答えが短時間で頭に浮かび、患者に適切な回答が出来ると思われる。出来るだけ、先生に整理したお話しを、たくさん語って頂く作戦である。

こちらも事前にメモ整理することで、「先生に何をお尋ねしたいか」を整理することが出来、また、診察室を出た後の、いわゆる言い忘れを防ぐことが出来る。


ーーまとめ


患者は知恵を生かして、日本の良好な医療資源を最大限活用するのが、かなりのお得である。


日本は、世界でも希少な国民皆保険制度で医療費は安い。アメリカだったら医療で破産はよくあるようだ。患者側に医師を選べる豊富な選択権があり、この患者に有難い制度は、世界では多くない。そして、医療関係者のみなさん、大半は優しくて熱心だ。


「日本人に生まれて良かった」クラスのとても恵まれた医療環境だ。


医療の進歩は著しいが、患者のIBDとの厳しい闘いは続く。


現実を考えると、世界に誇る日本の医療環境、患者がこれを生かさなきゃどうすると思う。

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