患者体験談

潰瘍性大腸炎のきなこさんの体験談、最終作です。

体験談③ではこれからの目標や他の患者さんへの心温かいメッセージです。

ぜひご一読ください。


グッテスタッフ


Q.何かに失敗して、立ち直ったきっかけや支えになったことはありますか?

主治医から「命(時間)は有限、心を乱す人とは関わるな」と言われ、他人の言動から落ち込んだり、ショックを与えられたり、ストレスになったりする出来事から切り替えられるようになりました。大体の出来事は主治医に話して相談しています。いつもじっくりと話を聞いて共感してくださる先生でとても助けられています。また、私の病状や薬などの質問に対してもいつも丁寧に説明してくださり、一緒に向き合ってくださるのでとても心強い存在でもあります。潰瘍性大腸炎は主治医と長く付き合っていくことになるため、主治医との相性は非常に重要です。

 また、病気があっても早く自立したいという思いもあり、大学時代から結婚するまでは一人で頑張っていたのですが、無理をして悪化したり、風邪をこじらせたりした際には両親に助けてもらいました。一時期、実家に戻ったこともあります。今まで食事や生活面では本当に両親に支えられていたことを強く実感しました。結婚して子育てをするようになり、一人で買い物や食事作り、家事をこなしていた母の偉大さを感じています。



Q.今後の目標や夢はありますか?

6年前に体調不良で退職し、ステロイドによる体重増加やムーンフェイスなどの外見の変化でも悩み、さらにコロナ禍になり運動不足にもなったことで、食生活を見直すきっかけになりました。腸活を学び、“腸を労う”という意識が芽生え、食材や調味料などにも気を遣い、買い物や調理することが増えました。潰瘍性大腸炎の食事は、家族みんなの健康維持にも繋がることも実感しています。また、今までで一番自分の身体と向き合う時間にもなり、ステロイドの副作用やアラフォーならではのホルモンバランスの変化による不調軽減のため、あらゆる方法を探り、ツボ押しや適度な運動やリラックス法などを取り入れながら過ごしています。すべてに効果を感じるわけではないですが、自分の身体を労わることは、お腹の調子を整えることにも繋がり、精神的にも女性的にもポジティブになれる感じがしています。

これらの学びや経験も活かして、若い世代のIBD患者さん、その中でも特に女性のIBD患者さんにとっての身近なアドバイザーのような存在でありたいと思っています。また、患者さんやご家族がいつでも安心して利用してもらえる場所、そして支え合える場所として、難病ピアサポーターや患者会活動も継続していきたいと思います。そして、難病患者が社会との繋がりを持ち続けられるような社会にしていきたいという願いがあります。



Q.診断直後の患者さんへのメッセージ

きっと、とんでもない病気になってしまった、人生終わったなとか、楽しくないなとか、ネガティブな気持ちでいっぱいだと思います。病気にならない人生の方が断然好きなことを好きなように好きなだけできると思いますが、人の痛みや辛さを理解できて人に寄り添える人は、私たちのような病気になったりして絶望感を味わった人だけです。それを前向きに捉えるかは自分次第ではあります。何かに頑張ること、取り組むこと、乗り切ること、達成することは健康な人より何倍も何十倍も凄いことなので、自分を褒めて褒めまくっていきましょう。

ありがたいことにこの病気の仲間は世界中にとてもたくさんいます。困ったときや辛いときに頼ったり共感してくれたり、また嬉しいときや幸せなときを共有できる場がたくさん用意されています。また、意外と身近に同じ病気の人がいたりします。私も学校の先生や同級生にいたりして驚きました。もし機会があれば病名をカミングアウトしてみるのも良いかもしれません。



Q.上記以外に、他の患者さんに伝えたいこと、ご自由にお書きください

 こんなに長い私の体験談を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。約30年間を思い出すのはとても大変でしたが、病気と共にこうやって無事に生きてこられたことを自分でも驚いています。

実は10年程前に第2子を授かったと思いきや、稽留流産の診断で流産の手術をしました。しかしその後すぐに侵入奇胎という病気だったことが判明し、抗がん剤治療をしました。完治しましたが、再発の可能性はゼロではないため経過観察中です。侵入奇胎は、絨毛癌の一歩手前の状態で患者数がとても少ない病気です。情報も少なく、同じ病気の人とも関わることができず心細かったです。10年経った今ようやくネット上に情報が増えてきました。

また8年前に下垂体機能低下症(ACTH単独欠損症)という病気も発覚しました。患者数が少ない指定難病の一つです。ステロイドの影響が考えられましたが、私の場合は原因不明で、副腎からステロイドホルモン(コルチゾール)が全く出ない状態なので、非常に疲れやすく、急に眠気や具合が悪くなることが増えてしまい、思うように家事や育児、外出ができないことが増えました。同じような病気の人はどんな症状や生活をしているのか知りたくて、難病相談支援センターにお願いして、下垂体疾患の方への相談や交流会の開催をお願いしたこともあります。

潰瘍性大腸炎に加えて、また別の病気を発症したり、ステロイドの副作用や副腎不全症状と付き合う日々は結構大変です。どうしても“なぜ私だけ?”という感情になりがちですが、いつもそばでそんな私の気持ちを受け止め、見守ってくれる家族に感謝です。また、こうやって皆さんに伝えることで何かの役に立ったり、参考になったり、前に進むきっかけとなってもらえたら幸いです。(これほど多くの稀な病気を併発する人はIBD患者の中でも非常に少ないと思いますので、心配しないでくださいね。)

そして最後に、難病患者が病気や症状を受け止めながら前向きに生きていくためには、同じ病気の患者同士の情報交換の場や専門医の存在、適切な説明と診療が必要不可欠だと感じています。潰瘍性大腸炎やクローン病は患者数も多く、治療も日々進歩し、専門医も増えてきています。不安なときや困ったときは、主治医や相談機関、インターネットなどを活用しながら、自分の身体を労わることを忘れずに、そして家族との時間も大切にして、共に過ごしていきましょう。


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