質問&おしゃべり
昨日の投稿に続き、2月19日に開催されたイベント『RDDおしごと~RDD就労crossing~【当事者体験共有の時間】』の中で行われた就労支援ネットワークONEの中金さんと4名の難病患者の方によるパネルディスカッションの様子を投稿いたします。
4名の難病患者の方々は以下となります。
Aさん(疾患名:多発性硬化症/視神経脊髄炎 美容師)
Bさん(疾患名:全身性エリテマトーデス 作業療法士)
Cさん(疾患名:強直性脊椎炎 工場での軽作業)
Dさん(疾患名:クローン病 広告代理店人事)
4名の方の自己紹介部分のレポートはこちらからご確認ください
https://gcarecommunity.com/article/883
<<就労についてのパネルディスカッション>>
中金さん:
今の就業契約はどうですか?治療したり通院したりについて会社にどのように共有していますか?
どのタイミングで誰に対して病気の話をしていますか?
病気について会社に共有していないなら、その価値観についても教えてください。
Aさん:
正社員の話がでた時に病気のことを伝えました。
病気になってから実感した”この仕事は辛い”、”この仕事は調子が悪くなる”という経験を伝えました。
どれくらい働けるか、どれくらい休憩があると助かるかの条件をすり合わせた結果、自分のペースで働くためには正社員じゃない方が良いと判断し、業務委託の希望を伝えました。サロンのオーナーがOKしてくれたので、今の形(業務委託)で落ち着いています。
自分は、病気のことは伝えた方が良いと思っています。病気について伝えず、後々になって、会社側が知ると問題になったりめんどうかなと思い、前職でも伝えていました。
今自分が働いている会社は従業員が少ないので、病気に関して他のスタッフへも全部伝えており、特に問題を感じていませんが、従業員数が多い場合に、病気を開示している方がコミュニケーションがスムーズに進むかなと思います。 今後の再発の可能性(再発時に現れる症状等)についても伝えた上で、(雇用契約を結んで)いいですか?と確認しました。突然入院することもありましたが、働きながら自分の姿を見てもらって、その都度コミュニケーションをとりました。
病気については事前に話をしていたものの、自分が伝えたことが完全に伝わっているかはわからないです。でも、病気によって起こることの可能性を知っておいてもらうことは大事だと思います。見た目では病気があるかどうかわからないので、病気を伝えた時のリアクションは人によって様々です。”疲れやすい”という症状についても「ただの体調不良じゃないの?」と思われていた可能性はあるかもしれませんね。
中金さん:
雇用形態や状況において開示の有無は様々かと思いますが、どうですか?
Dさん:
自分は就労開始後にクローン病を発症して入院をしているので、一緒に働いているメンバーには、開示する必要が必然的にありました。
中金さん:
部署や上司が変わった時に病気について伝えるのは会社側ですか?自分で伝えましたか?
Dさん:
自分は隠さないスタンスなので、必要な場面で病気について全て開示していますが、クローン病という病名を知ってもらうことが必要かというとそうではないと思っています。「こういう症状があります」と伝える人もいれば、「食事に制限があります」程度の情報を伝える人もいて、全員に同じ粒度で伝える必要はないと思います。いつもペアで働いている人には、詳細な情報を伝える必要がありますが、月1回位しか会わない人に細かい話をする必要はなく、人によって情報の多さは変えています。
会社が病気について関係部署に伝えてくれるのでは?には頼りません。なぜなら会社の人が病気に詳しいかっていうかとそうではないので、病気に関しては自分の口から伝えた方が正確だと思っています。
中金さん:
新卒の方、学生の方、若い方に就活について伝えたいことはありますか?
Dさん:
就活にあたって、どこまで開示するかは難しい問題だと思っています。
企業側は、病気を理由にして不採用にするのはいけないとなっていますが、病気を個性と捉えたとして、その個性が自分の会社に合っていないと判断されることはあると思います。開示することで病名の印象が先行して、その印象の中で判断されて不採用になる可能性があるのは勿体ないことだとも思います。人事は少ない情報でその人のことを判断せざるをえないので、病名はどうしても判断材料の一つになります。なので、就活の段階でどこまで開示するかは、自己判断であり正解はないと自分は考えます。ただ、自分がこれから就職活動するとしたら、病気については聞かれたら答えますが、病気があるから仕事ができないかというとそうではないと思っているので、履歴書には書かずに活動すると思います。やはり、人事目線で考えると、同じ能力の人が2人いたら、病気のない人の方が雇用するにあたって楽だと感じてしまうのは、人の性なのかもしれません。
中金さん:
ポテンシャル(求職者の潜在能力を評価基準とする採用方法、即戦力ではなく、将来発揮するであろう能力に期待して人材を選考)じゃない部分に採用の可能性はあると思いますか?
Dさん:
”病気がある”は働く上での評価は、マイナス加点になってしまうと自覚しています。それでも、この人と働きたいと思わせる加点ポイントは何かっていうことを考えるようにし
ています。
中金さん:
新卒時、転職時の就職活動の工夫はありますか?
Bさん:
新卒時、病名を伝えて就職活動をしていたら、大学4年時には採用されず卒業後ニートになりました。そこで焦って病名を伝えずに就職活動をして採用されました。就労がはじまって体調不良が続くと、医療業界だから不審に思われてて上司に病気を伝えることになりました。私の会社は、正社員かつ若い人は10時間労働でバリバリ働かせようというスタンスでしたが、子供のいるママさんと同じ6時間勤務にしてもらえました。雇用形態は正社員から契約社員に変わりました。上司には病名を伝えましたが、一緒に働く人には病名は伝えていません。”日光を浴びると体調を崩す”というような症状は伝えました。
病気を開示せずに活動した時のごたごたがあったので、転職時は病気の開示についてものすごく考えました。考えた上で、病名じゃなくて、日光過敏と通院のことを履歴書に書きました。面接時にも聞かれましたが、治療中であることと、就労にあたって気をつける点と、これまでの就労実績を伝えて、採用となりました。雇用する側は、自分の会社で働くことが病気を悪化させるのではないかという懸念があるので「この人は働いても体調は悪くならないだろうか」という点を確認する質問が色々と聞かれました。病名で不採用にするのはタブーだと知ったので、こちらも病名は隠して、症状だけ伝えました。その症状が悪化したらどうなるの?どう対処するの?という質問は面接でよく聞かれました。
中金さん:
何社くらいで採用は決まりました?
Bさん:
5病院受けました。友達の状況を聞いてみるとだいたい1〜2病院でうかる人が多いです。
中金さん:
様々な要因で採用にいたらないことはありますが、何か理由のある応募者にもニーズは増えてきてはいる世の中の情勢になってきたと思います。
中金さん:
Cさんは、会社にどのような情報を伝えていますか。
Cさん:
発症が高校の時で足を引きずりながら歩いていたので、隠すことができない状況もあり、開示非開示という考えはもっていませんでした。転職も2桁をこえるくらい何度もしました。転職する時には”できないこと”だけは必ず伝えます。私の場合だと”重いものは持てない”ははっきり伝えます。”できないこと”と同じように”できること”も伝えます。
”できそうかな?”と思って応募しても、雇用側とお互い話をしながら”難しいかな”となり、世間話で終わってしまうような面接もありました。
中金さん:
障害者雇用で10年以上同じ会社に勤務しているとのことですが、現場での工夫はありますか?周囲に理解してもらえないと感じるようなことはありましたか?
Cさん:
大枠的には軽作業と表示されている業務をしています。日常的に自宅でも田畑の管理をしていてその延長線上で働けるような業務なので、敷地面積がそこそこある会社ですが、慣れた仕事でとても助かっています。面接時から「1日の中で絶対しなくてはならない業務はないので、体の調子に合わせて業務を組み立て、体調に合わせて休憩をとってもかまわない」と伝えてもらっていました。このような理解があるからこそ10年以上続いたと思います。
中金さん:
一般雇用と障害者雇用で違うと思う点はありますか?
Cさん:
ハローワークでは障害者枠になると求人票の掲載がパソコンでの検索にヒットしなくなります。障害者手帳を見せて専門の担当者の窓口にある別の求人票から見つけることになります。障害者と一般枠、両方検索してきましたが大きな違いは特に感じません。
中金さん:
就業中に体調が悪くなった時、どのように対応していますか?
Dさん:
打ち合わせでお客さんのオフィスへ行った時、貧血でトイレで立ち上がれなくなり、救急車で運ばれたことがあります。病気を開示していたので、同僚や上司は、大丈夫かと気遣ってくれました。こういった部分でのサポートをもらうためにも、開示は必要だと思います。自分が就職活動をするとしたら履歴書に病気のことは書かないと先程言いましたが、もし採用されたら、就労開始前のどこかの時点で開示はすると思っています。全く隠した状態で働くのはハードルが高いかなと思います。自分が思っている以上に”できないこと”はあると思っているので、周りのサポートは絶対必要だと考えています。
中金さん:
自分の状況が変わった時のためのコミュニケション、人とのつながりのネットワークは必要だと思いますが、いかがですか?
Bさん:
自分の状況や体・症状の変化には小さいものと大きいものとあると思っています。
小さい変化だと、体が疲れやすい、動きづらいなと思う変化なのですが、そのような時には、上司に状況を伝えて早退させてもらっていました。私は仕事に慣れるのに時間がかかり、月に1〜2回くらいは早退していました。
大きい変化だと、仕事で無理をし過ぎて2年目の時に、体調を大きく崩しました。熱がずっとでてて病気の再発がわかり休職となりました。復職については、これまでのママさんと同じ働き方ですら給料がギリギリなので、これ以上勤務時間を減らしたくなく思っていましたが、上司はこれまでと同じ働き方をさせて良いのか不安に思っていたようです。復職にあたって勤務時間以外に調整できる部分はないか、上司と相談しました。休職中はパソコン教室でスキルを身につけました。中金さんに出会って復職計画を練り、復職に際しての意志を見せつつ(パソコン教室でのスキル獲得)、体力を温存する形での復職計画(最初は週2日勤務から初め、徐々に増やしていき休職前の状態に戻していく)に、上司も納得し、実行することができました。
中金さん:
復職に際してのどのような段階を経て復職可能と会社に理解してもらうか、その内容を会社に”見える化”することが、精神疾患と違って難病患者は難しく、Bさんについてはその部分をお手伝いさせていただきました。
Aさん:
スタッフが3人なので、お客さんの予約は、それぞれができる範囲でコントロールしています。自分の体調が良くない時は、お客さんの予約数を調整します。あまり調整しすぎると自分の給料が減ってしまうのでほどほどにしますが、本当に辛い時は休むという選択もします。体調不良への対処が早くなると回復も早いです。自分の体の調子を常に観察して変化に気づくことが早くなると働き方もそれに応じて変えることができるので、長く働く上で病気のコントロールがつきやすくなります。仕事の実体験を通して、自分自身の”できる”・”できない”、”やれる”・”やれない”を判断できるようになります。私の働いているお店は小さいからこそ、自分の給料が減ってしまう可能性もありますが、仕事のコントロールができることが多く、その点をメリットに感じています。
中金さん:
顔の見える範囲で働いていると、不満も少ないという話は良く聞きます。これは中小企業ならではのメリットですね。Cさんは、お仕事の中での工夫はありますか?
Cさん:
ここ数年突発的に痛みが発生します。その日の夜は平気でも翌日の朝になると痛くなり動けなくなるという感じで、痛みの発生の頻度が増えてきています。私は、とにかく”頑張らない”、”無理しない”を徹底しています。年齢を重ねるにつれて、細く長くの方向で考えた方が楽だと思い、無理なことは簡単にギブアップします。一緒に働く工場長も、特に理由も聞かずに了承してくれます。働き始めた当初はフルタイムでしたが、季節によっては、やることが少なかったり、体調によっても勤務時間を切り上げたり、前倒しにしたり、、自分の働きやすい形に調整できることでかなり楽になりました。こんな感じで”頑張らない”を全面にアピールして過ごしているのが現状です。
自分以外にも多様な病気や人生を持っておられる方々のご参加で、このような場所ができ、お互いに知り合うことが、誰かの情報や希望になるのではと思いました。
中金さん:
最後にみなさん一言ずつお願いします。
Dさん:
難病は、色々乗り越えつつ頑張らないといけないと思っています。「難病があるから上手くいかない」と諦めるのではなくて、そこを乗り越えて前向きに考えていかなければならないと思っています。励みになって嬉しいので、もし聞きたいことがあったら、聞いてください。新卒採用の質問も回答します。
Bさん:
難病って伝えると「死んじゃうの?」みたいな”無意識の思い込み”みたいなものがあるけれど、色んな人がいるよってことを広めていきたいと思っています。自分自身も難病に飲み込まれず、自分の良いところを見つけて、人生楽しみたいと思っています。
Cさん:
難病だけども、できる・できないの範囲や、疾患の垣根を越えて、同じ仲間と悩みを共有しながら過ごしていければと、思って活動しています。病名を知ってもらうよりも、そういう人たちと一緒にいろんな情報を共有しながら、少しでもより良い生活ができるような環境にしたいと思っているので、今回のようなイベントで沢山の人に見てもらえて嬉しいです。これを一歩として次につなげていきたいです。
Aさん:
病気になって色々大変なことは沢山ありましたが、そこから見えてきたこともあります。今だからこそやりたいことも沢山見つけられました。病気になったばかりの頃は、なかなかすぐに”前向きに”は難しいし、状況もすぐには好転しないことも多いです。体を壊したら元も子もないので頑張りすぎず、自分のできる範囲で、自分らしく・それぞれの人らしく、楽しくやっていけたら良いと思います。
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イベントの後半「就労についてのパネルディスカッション」のシェアは以上です。
異なる疾患とその特徴を抱える中での4名の方の発症時からの人生と就労の軌跡は、誰1人同じものはなく、それぞれの方がその時の自分の病気と人生に一生懸命・真正面から向き合って歩んできた唯一無二のもので、どれも等しく興味深いものでした。皆さんの話に聞き入っていて、あっという間の2時間を過ごしました。
来週は、難病患者を支援する機関の皆さんの話を聞くことができます。私たち難病当事者が知らない就労につながる役立つ情報を知ることができるチャンスとなりそうです。
我らがGケアーの宮﨑さんも登壇します!お時間の都合がつく方、ご興味のある方は、ぜひお申し込みください♪
今週末(2/26)に開催されるイベントは、以下から申し込みが可能です(2/25(金)24時まで受付可)
【支援機関、就労情報共有の時間 /「難病患者、希少疾患患者の就労の今、そして未来を考える」】
・日時:2/26(土) 14:00pm-16:30pm
・概要:
1)1部:「難病患者の方も利用可能なサービス・支援について 利用説明」(仮)
お話:高齢・障害・求職者雇用支援機構東京支部 東京障害者職業センター 次長
2)2部:「難病患者、希少疾患患者の就労の今、そして未来」
インタビュー・対談. 吉川祐一氏(一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)代表理事)×中金竜次(就労支援ネットワークONE)
3)
① 「‘難病患者の社会参加白書‘について」
重光喬之氏(NPO法人両育わーるど 理事長/難病患者の社会参加を考える会 発起人)
② 「IBD患者さんの仕事の工夫~働きやすい環境づくりとキャリア選択~」
宮﨑拓郎氏(株式会社ジーケア/米国管理栄養士(RDN)・公衆衛生学修士・中小企業診断士)
③ 全体パネルディスカッション 「難病患者、希少疾患患者の就労の今、そして未来」
(両育わーるどの重光氏、ジーケアの宮﨑氏、就労支援ネットワークONE 中金氏、3者)