こんにちは、クローン病看護師のくにです。
前回はIBDの治療目標についてご紹介しました。(https://gcarecommunity.com/article/899)
今回はIBDの炎症マーカー(炎症の程度を把握する検査)についてご紹介します!
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まずは4つの炎症マーカーを表にまとめました。
この中でも便中カルプロテクチン、LRGはここ数年で日本でも使われるようになってきましたね。
CRP、赤沈は長年使われている検査です。臨床調査個人票に記載する項目でもあるので、皆さんなじみのある項目ではないでしょうか。
それぞれ少し詳しくご紹介していきます。
【便中カルプロテクチン】
IBDの炎症マーカーのうち、唯一便の検査です。
カルプロテクチンは白血球の一種である好中球の構成成分で、腸管内の炎症が強いほど便中に多く含まれます。
保険診療では基本的に3か月に1回の頻度で検査が可能です。
カルプロテクチンでは腸管内の炎症の程度を把握することができますが、あくまで内視鏡検査の補助と位置付けられており、内視鏡検査の代わりにはなりません。
加えて、カルプロテクチンではがんの早期発見は行えないことにも注意が必要です。
このため確定的な診断・評価のためには引き続き内視鏡検査を行う必要があります。
【LRG(ロイシンリッチα2グリコプロテイン)】
IBDの疾患活動性の評価のために研究・開発された検査です。
LRGはIBDの内視鏡検査による活動性評価に相関して血液中で増加することがわかっています。
炎症があってもCRPに反映されない症例の評価にも有効とされています。
LRGもカルプロテクチンと同じく、保険診療では3か月に1回の頻度で検査が可能です。
【CRP(C反応性タンパク)】
全身の炎症を反映する検査値のため、IBDの悪化以外にも怪我や感染症、他の疾患によって上昇する可能性があります。
【赤沈(赤血球沈降速度)】
CRPと同様に、全身の炎症を反映する検査値です。全身の状況や他の検査結果と併せて病状を判断する必要があります。
※予想外にCRP・赤沈が上昇していた時は焦らずに、まず自覚症状や全身の状況を確認してみてください。そして何か心当たりがあれば診察の際に先生にも伝えましょう。
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以上、IBDで利用される4つの炎症マーカーについてご紹介しました。
IBDに特化した炎症を反映する「LRG」、腸管の炎症を反映する「カルプロテクチン」、全身の炎症を反映する「CRP」と「血沈」。
それぞれの違いが理解いただけたでしょうか。
この他にも、潰瘍性大腸炎ではFIT(免疫学的便潜血法)という検査で病状をモニタリングしている方もいるかもしれません。
治療だけではなく、診断や病状の把握のための検査も日々研究されています。
これからも便利な検査が増えていくといいですね。
ご不明点等あればお気軽にコメントください(^^)
参考文献:
1.Disease monitoring in inflammatory bowel disease. Chang S, Malter L, Hudesman D.
World J Gastroenterol. 2015 Oct 28;21(40):11246-59. doi: 10.3748/wjg.v21.i40.11246.
2.免疫炎症性難病である炎症性腸疾患の疾患活動性を迅速に評価する血清バイオマーカー(LRG)の実用化, 国立研究開発法人日本医療研究開発機構,2018-9-11, https://www.amed.go.jp/news/release_20180911.html (参照2022-4-25)
3. 2018年度 研究事業成果集-炎症性腸疾患の疾患活動性を迅速に評価する血清バイオマーカー(LRG)の実用化, 国立研究開発法人日本医療研究開発機構,2020-6-23,
https://www.amed.go.jp/pr/2018_seikasyu_09-02.html(参照2022-4-25)
4.千葉明子,便中カルプロテクチン検査の臨床における有用性について,生物試料分析,2020, 3, 43, p.193-199, http://plaza.umin.ac.jp/j-jabs/43/43.193.pd5(参照2022-4-25)
5.三洋化成工業株式会社, 潰瘍性大腸炎の病態把握に貢献する体外診断用医薬品, Sanyo Chemical, 2021-7-28, https://www.sanyo-chemical.co.jp/magazine/archives/4646(参照2022-4-25)
6.半井明日香他, 免疫学的便潜血定量法による潰瘍性大腸炎の粘膜治癒評価, 岡山医学会雑誌, 第125巻, December 2013, p. 221-223 , https://www.jstage.jst.go.jp/article/joma/125/3/125_221/_pdf/-char/ja(参照2022-4-28)