専門家へのお悩み相談

GYUCEさんから、「ビタミンDと再燃」についてわかっていることがあれば教えて欲しいと質問をいただきました。


まず、ビタミンDは多くのIBD患者さん(20-70%程度)で不足しているとの報告もあり(1)、IBD患者さんの中でも興味の高いビタミンではと思います。


そして、結論から言うと、まだ科学的根拠としては確立されていませんが、ビタミンDと再燃については様々な研究が行われていて、ビタミンDレベルが低いほど再燃リスクが高まることが示唆されています。


例えば、230名の潰瘍性大腸炎患者を対象とし、25-OHビタミンD(体内のビタミンDレベルの指標)と腸の炎症やIBD症状との関係を検証した試験(2)では、25-OHビタミンDが低いほど、腸の炎症や症状悪化のリスクが高まることが示唆されました。また、119名の寛解期クローン病患者を対象とした横断研究(3)においても、25-OHビタミンDが低いほどとカルプロテクチンが高くなることが確認されました。


さらに、3200名以上のIBD患者を対象とした前向きコホート研究(4)においても、25-OHビタミンDレベルが低い患者ほど手術や入院が増加する傾向が示されました。なお、この試験では、初めに測定した際に25-OHビタミンDレベルが低くかったものの、その後の測定で25-OHビタミンDレベルが改善したクローン病患者では、クローン病に関連する手術のリスクが低下したことが確認されました。


ビタミンDと再燃との関わりについては、メカニズムも解明されていませんが、細胞や動物を使った実験で、ビタミンDが免疫機能に働きかけ炎症を抑えることや、腸管のバリア機能を高めることなどが示唆されておりIBDとの関連が注目されています(5)。さらにビタミンDと腸内細菌との関係にも注目が集まっています(5)。


まだ不明点も多いですが、これまでの研究から、ビタミンDが再燃抑制に関してなんらかのポジティブな影響を与えている可能性がありそうですね。


上記を踏まえると、日本では25-OHビタミンDが測定されないことが多く、自分自身のビタミンDレベルがわからないことも多いと思いますが、狭窄リスクなどがない場合は、一般的にビタミンDが多く含まれる食べ物(魚介類やきのこ類など)を意識して摂取することが勧められると思います。


また再燃とは異なりますが、ステロイドを長期で服薬されている患者さんでは骨粗鬆症リスクが高まりますので、定期的に骨密度を測定し、骨密度の低下が認められる場合は、ビタミンDが含まれる食品やサプリメントの摂取について主治医と相談することが大切です。



GYUCEさんから頂きました「寒い時期の再燃」や「日光を浴びる効果」についてはまた別の記事で紹介させていただきますのでしばしお待ち頂けましたらと思いますー。




(1) Hwang C, Ross V, Mahadevan U. Micronutrient deficiencies in inflammatory bowel disease: From A to zinc. Inflamm Bowel Dis. 18(10):1961-1981, 2012.

(2) Meckel, K.; Li, Y.C.; Lim, J.; Kocherginsky, M.; Weber, C.; Almoghrabi, A.; Cohen, R.D. Serum 25-hydroxyvitamin D concentration is inversely associated with mucosal inflammation in patients with ulcerative colitis. Am. J. Clin. Nutr. 2016, 104, 113–120.

(3) Torki, M.; Gholamrezaei, A.; Mirbagher, L.; Danesh, M.; Kheiri, S.; Emami, M.H. Vitamin D Deficiency Associated with Disease Activity in Patients with Inflammatory Bowel Diseases. Dig. Dis. Sci. 2015, 60, 3085–3091.

(4) Ananthakrishnan, A.N.; Cagan, A.; Gainer, V.S.; Cai, T.; Cheng, S.-C.; Savova, G.; Shaw, S.Y. Normalization of plasma 25-hydroxy vitamin D is associated with reduced risk of surgery in Crohn’s disease. Inflamm. Bowel Dis. 2013, 19, 1921–1927. 

(5) Jane F, Sheldon CC, et al. The Role of Vitamin D in Inflammatory Bowel Disease: Mechanism to Management. Nutrients . May; 11(5): 1019.

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