専門家の記事

みなさまこんにちは。前回の「患者中心の医薬品開発」の記事はコミュニティ内での閲覧も多く大きな反響がありました。その一方で、具体的にどのように患者が開発に関わるのかイメージがわかないといった声も頂きました。

 

そこで、今回は具体的に医薬品の開発において患者さんの声をどのように反映していくことができるのか、以前参考にした「患者の声を活かした医薬品開発」 を参照しながらいくつか事例も含めて紹介できればと思います。

 


治験の実施計画立案への患者の声の反映

治験は、新薬の開発・承認に必要な厚生労働省などに提出されるデータを集積するための臨床試験のことを意味します。具体的には、新しい開発中の医薬品を実際に対象となる患者さんに投与して、その効果や安全性を検証するものとなります。

 

この計画を立案する上で、患者さんの声を反映することが重要と考えられています。それはなぜでしょうか? 

 

治験においては、多くの患者さんに参加してもらい試験を完了してもらわないとデータが蓄積できません。しかしながら、企業側が実際に試験に参加してくれる患者を見つけることは難しいと言われています。(これは治験の広告が多いことからも皆様想像がつくかと思います。)

 

そのような中、事前に患者さんが治験に参加する際の実生活への影響や負担を把握し、その負担を軽減することができれば、参加する患者さんの負担が軽減されます。その結果、治験を実施する製薬企業もより多くの患者さんに治験に参加してもらえる可能性が高まるので治験に参加する患者さん、製薬企業の双方にとってメリットがあると考えられます。

 

 

治験参加同意説明文書作成への患者参画、同意取得の工夫

患者さんが治験の内容を正しく理解し、同意する際に使われるのが治験の同意説明文書です。皆さんも検査や入院時などに同意書を読んで署名することも多いと思いますが、その治験説明文書というイメージです。

 

この同意説明文書が患者さんにとってわかりづらいというのが問題になっています。特に海外では注意事項や遵守事項について分かりにくいという声が多く、患者団体にレビューを依頼し、レビュー結果を同意説明書に反映するということが行われているようです。私もミシガン大学で食事の臨床試験に関わっていた時はこの同意文書を作っていたのですが、一字一句細かく大学側の審査委員会に修正を求められたことを良く覚えています。

 

このような同意説明文書が分かりづらいという点については製薬企業も意識していて、日本でも患者さんの声を取り入れて分かりやすい同意説明文書にすることが始まっているとのことです。

 

同意説明文についても、患者さんの意見が反映されることによって、患者さんが安心して治験に参加できるようになり、製薬企業にとっても治験の推進が進むことから両者にとって価値があることと言えるかと思います。

 


以上、今回は、「患者中心の医薬品開発」について具体的に関わり方があるのかについて紹介しました。「思ったよりも簡単に貢献できるかも!?」と思った方も多いのではと思います。私たちの方でも、もしみなさまの意見やコメントを治験に反映できるような機会があればぜひ紹介させて頂きたいと思います。

 

また、以前複数のGコミュユーザーさんから、「治験に興味はあるけど、いまいちなんなのか良くわからない」という話も伺っていますので、そもそも治験ってなんなの!?という部分についてもまた噛み砕いて紹介できればと思いますー。

 

 

参考資料:患者の声を活かした医薬品開発 -製薬企業による Patient Centricity-患者の声を活かした医薬品開発 -製薬企業による Patient Centricity-、日本製薬工業協会 医薬品評価委員会 臨床評価部会、2018年6月発行