専門家の記事

こんにちは。Gコミュニティの堀田です。


これまで私たちが実施してきたオンライン交流会やフィードバックアンケートなどから、治験に興味はあるけどよくわからないという声を多くいただきました。


そのため今回は、改めて治験がなぜIBD患者さんにとって大切なのかという点について3つのポイントとして紹介したいと思います。


今後は以前アンケートの中で頂いた質問を中心に少しずつお答えしていきたいと思いますので、ぜひ一緒に治験への理解を深めていきましょう。



1. 治験って何?


治験とは、新しい薬、いわゆる新薬が国から製造・販売しても良いというお墨付きである「承認」を得るために行われる、新薬の有効性や安全性を確認する臨床試験のことです。


そのために治験では、実際の患者さんに薬を使用してもらい、その効果を確認する必要があります。


現在患者さんが使われているほとんどの薬は、この治験を終えたものです。一方で、治験によって有効性や安全性が示されず、実際に使うことができなくなった薬もあります。



2. どうして治験がIBD患者さんにとって大切なの?


現在までの数年間に、多くの新しい薬がIBD患者さんに使用できるようになりました。例えばレミケードR、ヒュミラR、シンポニー R、エンタイビオR、ステラーラR、ゼルヤンツRなどです。これらの薬も、全て治験を終えて使えるようになったものです。


これらのような多くの生物学的製剤、いわゆるバイオ製剤によって多くの患者さんが、病状が安定した状態、いわゆる「寛解(かんかい)状態」になることが可能になってきています。


そのために以前と比べて、IBD患者さんが手術になるような状況が減ってきていることが近年知られています。例えば潰瘍性大腸炎の患者さんの病状が悪化した際に行われる全ての大腸を摘出する手術や、クローン病の患者さんが複数回手術を繰り返して、腸が短くなってしまい食事が食べれなくなるような状況(短腸症候群)が減ってきています。


しかしこれらのバイオ製剤なども、病気を完治させることはできず、あくまで病状が安定した寛解状態にさせることまでしかできません。


そのためまだ解明されていないことが多いIBD患者さんの病気を、完全に治すことのできる新薬を開発するために、治験が必要となるのです。



3. IBD患者さんにとっての治験のメリット


様々なバイオ製剤などを使用しても、残念ながら病状が安定せず症状に悩まされているIBD患者さんが多くいらっしゃいます。そのような患者さんにとっては、現在使える薬では治療の限界があることも事実です。


そのような患者さんにとっては、治験というのはとても大切な次の治療の選択肢となります。もしかすると開発中の新しい薬、つまり「治験薬」によって病状が改善する可能性があるためです。


しかし一方で、副作用のリスクや、通院の回数が増えるなどのデメリットもありますので、患者さんの現在の状況や治療の選択肢、また患者さんのお考えなどを踏まえて主治医とよく相談して治験に参加するかどうか決めることが大切です。


さらに治験では、薬剤費や病院に通院する費用なども製薬企業がサポートしてくれることが一般的ですので、そのような点はとても助かると思います。



最後に


治験はIBDの治療を発展させるために大切であることに加え、現在病気に苦しむ患者さんにとっても有効な治療の選択肢となる可能性があります。一方で副作用のリスクや患者さんの負担が多くなることもあります。


また以前の投稿で、新しい薬ができるまでの過程を記事に詳しくまとめていますのでご興味ある方はぜひご確認ください。


新しい薬ってどうやってできるの?

臨床試験とは?


今後も治験に関してこのようなことを聞きたいなどありましたら、お気軽にコメントもよろしくお願いします。