こんにちは、ジーケアの杉原です。
今回は、以前にご質問があった5-ASA製剤が腸内細菌に及ぼす影響について解説したいと思います。
<ご質問>
5-ASAが腸内細菌に対してどのような影響があるのか調べた研究があったらぜひ教えていただきたいです。
<回答>
5-ASA製剤(ペンタサ、リアルダなど)はIBDの治療の基本となる薬です。
5-ASA製剤の概要やなぜ炎症を抑えることができるかなど気になるかたは、過去の記事を参考にしていただければ幸いです。
https://gcarecommunity.com/article/99
https://gcarecommunity.com/article/164
5-ASA製剤が腸内細菌に及ぼす影響ですが、結論から言うとよくわかっていないのが現状です。
これまでの研究では、5-ASA製剤が細菌にどのような影響を及ぼすのかや、5-ASA製剤を使用している人としていない人で腸内細菌を比較する研究が行われています。
例えば、2018年に報告された研究では、5-ASA製剤を使用している人は、使用していない人に比べて炎症部位の腸管でFirmcutesの細菌が低い、Proteobacteriaの細菌が高いことが報告されています。実際に5-ASA製剤の投与前後でもこのような反応が見られたため、論文の筆者らは5-ASA製剤が腸内細菌に影響を及ぼすと考察しています。
参考 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6008376/
しかし、5-ASA製剤は炎症を抑える作用があるため、これらの腸内細菌への影響が5-ASA製剤による直接的な影響か、炎症を抑制したことによる間接的な影響なのか、その因果関係はわかりません。
実際、活動期のIBD患者さんは治療によって炎症が抑えられると、健康な人に近い腸内細菌のバランスに戻ることも報告されています。
以上のことから、5-ASA製剤が腸内細菌に及ぼす影響はまだよくわかっていないと言うのが結論です。
5-ASA製剤が炎症を抑えるメカニズムについてはまだわかっていないことも多いので、何か面白い研究があればまたGコミュニティで紹介させていただきます。