こんにちは、ジーケアの杉原です。
今日は患者さんからご質問のありましたプロバイオティクスとサプリメントについて解説したいと思います。
<ご質問>
以前、IBDの講演会で5-ASAではなく菌製剤だけで治療できないのか尋ねた事があるのですが、日本の保険適用範囲での処方量では全然足りないとおしゃっていました。アメリカでは5-ASAではなく菌製剤やビタミンDなどのサプリメントを寛解維持に用いたりしているのでしょうか?
<回答>
菌製剤というのは、おそらく整腸剤やプロバイオティクスのことですね。
プロバイオティクスの基本事項については過去の記事をご参考ください。
参考 https://gcarecommunity.com/article/173
アメリカにおける治療についてあまり詳しくはありませんが、日本と同様にアメリカでも5-ASA製剤がIBDの治療の基本となります。
そのため、5-ASA製剤の代わりにプロバイオティクスやビタミンDのサプリメントだけで治療する人はあまりいないと思います。
しかし、通常の治療に加えプロバイオティクスやビタミンDのサプリメントを自主的に服用している人は結構いるのではないかと思います。
これまでの臨床研究では、IBDに対するプロバイオティクスの効果はかなり限定的であることが報告されています。
IBDに最も有効であると言われているVSL#3というプロバイオティクスがありますが、このVSL#3には8種類の細菌が4500-9000億個含まれています。
*現在販売されているVSL#3は組成が若干変更されているため、臨床研究と同じ効果が得られるかわかっていません。臨床研究と同様の組成はVisbiomeという名前で販売されています。
日本でよく処方される整腸剤は、1-3種類の細菌が1-10億個くらい含まれていますので、VSL#3は細菌の種類も数も桁違いに多いです。
先生がご回答された内容は、日本の保険適用範囲内での処方(いわゆる日本で処方可能な整腸剤)では、細菌の量が全然足りないという意味なのではないかと思います。
ただ、アメリカでもVSL#3は保険適用されませんので、自費で購入する必要があります。
Amazonなどでも購入できますが、1ヶ月分で10,000円以上するので、結構な出費になります。
折角アメリカにいるので私も試しに購入してみましたが、高いだけあって配送やフォローアップなどはとても丁寧でした。長期間試したわけではないので、効果についてはよくわからなかったです。
また、ビタミンDのサプリメントに関してですが、サプリメントを服用することによって血中ビタミンD濃度が上がるのは報告されていますが、病気に対する影響は症状を改善させるといった報告や変化しないといった報告があり、未だ結論が得られていません。
そのため、ガイドラインなどではビタミンDが不足している人に対してのみ、サプリメントの服用を推奨しています。
長くなってしまったので、最後に回答をまとめると、
「プロバイオティクスやビタミンDのサプリメントは、5-ASA製剤などの基本的なIBDの治療の補助的なものとして使用する」と考えていただければ良いと思います。
以前に堀田先生が記事にまとめてくださった通り、5-ASA製剤は服薬を遵守することがとても大切ですので、主治医の先生のもと、基本的なIBDの治療は続けていただけたらと思います。
参考 https://gcarecommunity.com/article/99