こんにちは、ジーケアの杉原です。
今回は、患者さんからご質問のあった潰瘍性大腸炎における中心静脈栄養について解説したいと思います。
<ご質問>
最近は腸内細菌の話題に興味があっていろいろ検索しております。
疑問に思うことがありましたので何か情報がありましたら教えていただけるとありがたいです。
「長期の絶食と中心静脈栄養管理が腸管不使用に伴う腸管粘膜の萎縮により腸管免疫能・防御能の低下、腸内細菌叢の変化(善玉菌の減少、腸球菌や緑膿菌、真菌などの増加)によって腸内細菌や毒素などが腸管粘膜内に侵入する。それに対して炎症細胞が反応し炎症性メディエーターが産生される」という記事がありました。
IBDでは活動期に絶食や中心静脈栄養が行われることが多いですが、これはクローン病の場合でしょうか?
腸内細菌叢の変化や炎症が惹起されてしまうのなら、潰瘍性大腸炎では絶食ではなく、腸に負担の少ない経腸栄養剤や食事にした方が良かったのではないかと思いました。
専門医ではなかったので絶食の適応が間違っていた可能性もあり、改めて専門医に診ていただく重要性を再認識しました。
症状も落ち着いて食事も5分粥程度でしたが全部食べられている時に突然絶食とTPNだと言われて訳がわかりませんでした。
①潰瘍性大腸炎の治療において絶食はさまざまなリスクが考えられますが、それでも絶食にした方が有益なのはどういった状態の時なのでしょうか?
②潰瘍性大腸炎では小腸にそれほど炎症が起こらないので絶食にしなくてもよかったりするのでしょうか?
③潰瘍性大腸炎の増悪ではなく感染性腸炎で下痢になっている場合は経腸栄養の方が原因菌を早く排出できるのでしょうか?
何か報告されていることがありましたら今後の治療の参考にさせていただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
<回答>
IBDでは消化管の炎症がひどく悪化すると消化管を安全に使用できないため、食事は絶食にして鎖骨下にある太い静脈などから栄養素を投与する場合があります。(中心静脈栄養)
クローン病と潰瘍性大腸炎では中心静脈栄養の効果の科学的根拠が少し違います。
クローン病では中心静脈栄養による腸管安静で寛解導入効果があることが確認されていますが、潰瘍性大腸炎では中心静脈栄養による寛解誘導効果は示されていません。
そのため、潰瘍性大腸炎では炎症を抑える目的で中心静脈を用いるのはあまり一般的ではありません。
しかし、潰瘍性大腸炎であっても重度の炎症や腸閉塞などにより消化管を使用するのが危険な場合、また経口摂取ができずに重度の栄養障害がある場合は中心静脈栄養が必要になります。
ご指摘の通り、中心静脈栄養を不必要に続けるのは体にとってよくありませんので、病態が落ち着き消化管が安全に使用できる場合は食事が再開されます。
③のご質問の答えはわかりませんが、基本的に消化管が使用できる場合は食事や経腸栄養が優先されます。
以上のことから、中心静脈栄養を行う場合は、消化管が使用できるか判断することがとても重要です。
もし治療に疑問がある場合は、主治医の先生とよく相談し、なぜその治療が必要なのかを確認することが大切だと思います。
それでも解決しない場合は、IBD専門の医師にセカンドオピニオンを求めるのもいいと思います。