消化器内科医の今井です。今回は、こちらもIBD患者さんから質問の多い生物学的製剤・JAK阻害剤の変更や休薬について紹介します。
生物学的製剤・JAK阻害剤の変更や休薬について大切なポイントは大きく二つあります。
ーー生物学的製剤・JAK阻害剤の治療を開始後、「その薬剤で寛解導入ができた後には、どれだけ長期間の寛解維持ができるか」
ここは、各製剤のエビデンスや主治医の先生の治療経験、そしてこれまでの治療歴などから主治医の先生が総合的に判断する形になります。
ただ、医療経済的な面から高価な薬剤である生物学的製剤やJAK阻害剤を休薬できるかどうか、そして、再投与の際の効き目などについては臨床試験が次々に行われています。
その結果により、治療方針は明確に変わっていく可能性がありますので、今後の各製剤のエビデンス動向についてもみていく必要があるでしょう。
ーーIBDが難病であり完治が難しい現状においては「治療の選択肢をいかに残しておくか」
近年新薬が多く登場していますが、長い人生を考えた場合にまだまだ治療の選択肢は限られる状況ではあります。
治療の選択肢を残すために、軽微な副作用などがあった場合でも、現在の生物学的製剤、JAK阻害剤を続けるという選択が行われることもあります。
上記を考慮した上で、生物学的製剤の変更や休薬を検討します。
上記以外のポイントとしては、治療強化に関することがあります。
ーー治療の強化の考え方
もし腹痛などの症状が少しでも残っており、病状が安定していないのであれば「治療を強化」することが大切です。
なぜなら炎症が持続するほど、潰瘍性大腸炎では大腸癌が発生する危険性が、クローン病では腸管狭窄が起こってしまう可能性が、それぞれ指摘されているためです。
つまり、治療の選択肢を残しておくことは大切ですが、一方で、今適切な治療を行わないと、より大きな問題につながる可能性があるといえます。
「治療の強化」とは、現在の薬に加えて、免疫抑制剤(イムラン、アザニン)や血球成分除去療法、または、座薬、ステロイドなどを加えることも非常に効果的です。
それでも、困難の場合に、生物学的製剤やJAK阻害剤の変更・スイッチを検討します。
このように、様々な視点から薬剤選択を考慮していくことになりますが、大切なことは、永続的な症状のコントロールとQOLを高めることであり、そして、できるだけ手術に至らないようにすることです。
まさに今、様々なエビデンスが日々更新されているところであり、そのような最新情報を踏まえ主治医の先生とよく相談して頂ければと思います。
また何かありましたらいつでもお気軽にご相談などしていただけたらと思います。