専門家へのお悩み相談

栄養学博士の杉原先生が最近ともさんの質問に答えられていたコメントが埋もれていましたので投稿として共有します。


<質問>

最近、新潟大学の歯周病の研究(2015年)で「ホエイペプチドが炎症性サイトカインの上昇を抑制し免疫能を調整する事で歯周病が改善された」という記事をネット情報で知りました。


・このホエイペプチドはIBDにも効果のあるものなのでしょうか?

・乳糖不耐症の人は摂りすぎない方が良いのでしょうか?

・ホエイペプチドをサプリメント以外で摂る方法にはどのようなものがありますでしょうか。


また、これもネット情報ですが‥シソにはtnf-α抑制効果があるのだとか‥

IBDのお薬には炎症を抑えるものが多いですが、普段の食事で炎症を抑える効果のあるものがありましたら知りたいです。


<回答>

ともさん


ご質問ありがとうございます。ネットにはたくさんの情報があり、この情報が本当なのか、IBDにも有効なのかというのは気になりますよね。


ご質問のホエイペプチドですが、ホエイは日本語で乳清と呼ばれるものになります。ヨーグルトをずっと放置しておくと、上の方に透明な液体が出てきますよね。実はあれが乳清と呼ばれるものです。ホエイペプチドはこの乳清からペプチドを分離したものです。アミノ酸が複数結合したものがペプチドであり、それがさらにたくさん結合したものがたんぱく質です。つまりペプチドはたんぱく質の分解物になるわけです。


ここで2つ目のご質問の件ですが、乳糖不耐症は、乳製品に含まれる乳糖という糖分をうまく消化吸収できないことにより起こるものになります。


乳糖は糖質になりますので、乳糖不耐症の方でもたんぱく質の一部であるホエイペプチドは摂取して問題ないと思われます。しかし、ホエイペプチドのサプリメントの中に乳成分が含まれる場合は乳糖不耐症の方に合わない可能性がありますのでご注意下さい。


ではこのホエイペプチドがIBD患者さんに有効であるかというご質問ですが、私の知る限りでホエイペプチドがIBD患者さんに与える影響を研究した報告はありません。動物モデルを用いた研究ではホエイタンパク質が腸炎を改善するといった報告がありますが、人に応用された研究はないのが現状です。


ホエイペプチドに限らず、ネットには〇〇の主成分であるXXXが病気を改善したという情報がたくさんあります。ただ、ほとんどの成分が動物実験のみで、薬のようにきちんと臨床試験が行われて患者さんにも推奨されているといった成分はほとんどありません。


しかし、効果が全くないというわけではなく、効果は誰もわからないというのが正しい見解かもしれません。また、このような食品成分は普段摂取する量よりかなり多いことが一般的で、サプリメントから摂取する以外は難しいと思います。


以上のように、この食品を食べたら炎症が抑えられるといったものはなく、IBD患者さんにはバランスの良い食生活が推奨されています。


ここでいうバランスとは、IBDに良くないと考えられている食品(牛肉、豚肉などの赤身肉、加工食品、油脂類)を減らしつつ、良いと考えられている食品(魚、野菜、果物など)を増やすということです。


じゃあ良くないと考えられている食品は全く食べたらいけないのかというと、そうゆうわけではありません。食べる量と頻度に気をつけながら、ご自分の体調に合わせて上手く食生活に取り入れていって大丈夫だと思います。


IBDにおける食事は、欧米では今とても注目されている分野です。今後も良い情報がありましたらGコミュニティの方で発信させていただきます。


ともさんに合った食生活が見つかるよう、今後もGコミュニティを活用していただければ幸いです。

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