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今回は、IBD患者さんから質問をいただくことの多いステロイド製剤についてご説明したいと思います。


ステロイドの薬剤はIBD患者さんの治療において、効果が高い薬剤である一方で副作用を常に意識して使用しなければいけないものであるため、私自身診察の中でも多くの患者さんからよくご質問をいただきます。


最近、新薬の副作用の少ないブデソニドがクローン病、潰瘍性大腸炎それぞれに使用できるようになりましたが、今回は従来のプレドニン・プレドニゾロンについて記載致します。


総量としてどこまで投与できるのか?


基本的には個人差がありますので、全ての患者さんに当てはまるような「安全に使用できる量」または「危険な量」という明確な基準はありません。


生涯使用量10000mgという数字を聞いたことがある人は多いと思いますが、この数字はあくまで過去の研究で、目安の量として報告されているだけです。


そのため基本的に全ての患者さんに当てはまる「自分は何g使用しているからまだ大丈夫」「何g使用したので心配が大きい」というような基準ではありませんのでぜひ誤解されないようにしてください。

 

留意点


ステロイドには特有の副作用があり、また免疫を抑える効果という意味でも新型コロナウイルス感染症が流行している状況ではリスクが高いことが知られていますので「本当に必要な方に、できるだけ短期間で、早期に減量していく」必要がある薬です。


一方で、ステロイド内服中のワクチン接種でも抗体が産生されることが報告されていますので安心してください。(抗体価はやはり免疫抑制により低めになることもあるようです)

 

ステロイドの効果がない場合の対応


ステロイドが効果がない場合の対応ですが、①比較的高用量のステロイドを使用しても効果がみられないものを「ステロイド抵抗性」、②ステロイド減量の過程で症状が再燃してくる「ステロイド依存性」の2つのパターンがあります。


いずれの場合にも、ステロイド以外の治療薬への切り替えが必要なタイミングです。現在非常に多くの選択肢が新薬として登場としており、メリット・デメリットがそれぞれあるので、ぜひ主治医の先生とよく相談するようにしてください。


その際の判断基準は、個々の患者さんの年齢、病状、これまでの治療歴等によります。最も大切なことは、漫然とステロイドを長く投与(一般的には3か月以上が長期となります)しないことで、的確なタイミングで治療法を切り替えていく必要があります。

 


以上となります。ステロイドを投与されている方で不安のある方はぜひ一度主治医の先生とご相談いただければと思います。