専門家の記事

米国登録栄養士の宮﨑です。今回はあれいさんよりおしゃべり広場に投稿のあったコーヒーや炭酸飲料と潰瘍性大腸炎リスクに関する論文を解説したいと思います。


ちょっと難しい内容になるのであくまでご興味のある場合にチェックいただければと思います。

 

ーー科学的な根拠:エビデンスの考え方


通常、医療領域でのエビデンスは研究手法によってレベル感が異なります。ランダム化比較試験やメタアナリシス・システマティックレビューというものが一番エビデンスレベルが高いとされています。


そして多くのガイドラインではこういったレベルの高い研究をベースに治療などの推奨を定めることが多いです。


 


https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000350338

 

ーー食事の研究と各研究のエビデンスレベル


食事の研究は非常に難しいと言われています。医薬品の研究の場合は患者さんをランダムにふたつに分けて薬とプラセボ(比較対象となる薬)分けて効果や副作用を検証するという方法が取られることが多いです。

 

一方、食事では、薬と比べて効果の差の度合いが少ないことに加えて、参加する患者さんの食事をしっかりとコントロールすることが難しいのでランダム化試験などは費用もかかり難しいです。


そういった中で、今回の研究であった症例対象研究や対象群を伴わない研究などが食事では多く行われています。

 

ーーUCとコーヒーに関する研究の概要


コーヒーやそれ以外のカフェインを含む飲料・食品の摂取、カフェインの総摂取量と潰瘍性大腸炎リスクとの関連を症例対照研究という手法で検討した研究です。


その結果、欧米よりコーヒーの摂取量が少ない日本においては、コーヒーやカフェインの摂取が潰瘍性大腸炎リスクの低下と関連することが示唆されたという内容でした。

 

ーーUCとコーヒーに関する研究の解釈


この研究の解釈は人によって分かれると思いますが、論文の中で著者が記載しているDiscussionという項目が参考になります(研究では一般的にResultの後にDiscussionが記載されています。)


ここでも記載されているようにこれまでも複数の研究が行われていますが、カフェインとUCとの関連があるという結果が得られている研究もあればないデータもありまだ解釈が定まっていません。


また、メカニズムもわかっていません。抗炎症効果などが影響を与えるかもしれないものの、まだ詳しくは解明されていないという状況です。今後の更なる研究が必要と著者もまとめています。

 

ーーコーヒー摂取に関する留意点


コーヒーについてはまだ科学的エビデンスが十分ではないので、まだガイドライン等でも推奨有無は記載されていません。基本的に活動期は控えるように言われています。寛解期については特に制限等は言われていません。

 

コーヒーを久しぶりに摂取される場合は少量から摂取を開始し、体の反応を見ていただければと思います。

 

以上、コーヒーに関する論文について少し詳しく解説してみました。また何かご不明点あればお気軽にコメントください。


出典:

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jgh.16439?af=R