専門家の記事

皆さまこんにちは。学校が休みになったり、リモートワークが始まったりといつもと違った生活をお過ごしの患者さんやそのご家族も多いのではと思います。


さて、今回はビタミン・ミネラルと免疫について紹介させていただきます。


少し前になりますが、IBDではビタミン・ミネラルが不足がちになり、体の機能に様々な影響を与える可能性があることを紹介させていただきました。


https://gcarecommunity.com/article/94


例えばIBDの活動期では、十分に食事が摂取できないことや、体内への吸収が炎症などにより阻害されることから、ビタミン・ミネラルが不足しやすくなります。一方、炎症が落ち着いている寛解期であっても、日々の食事の偏りや過度な食事制限などにより、ビタミン・ミネラルが不足することが多いと言われています。


そしてこのビタミンとミネラルは、昨今コロナウイルスの影響で話題となっている「免疫力」との関係も昔から研究で示唆されています。



免疫とビタミン・ミネラルの関係は?


免疫システムは、様々な細胞が密接に関わっている非常に複雑なシステムとなっています。そのシステムの様々なプロセスで、各ビタミンやミネラルが重要な役割を担っていることが研究でわかってきています。


例えば、ビタミンDは、免疫に関わる細胞の分化や増殖に関わっていたり、ビタミンB12は、免疫の調整に関わっていることが主に細胞を用いた研究などで報告されています。



ヒトの免疫力はビタミン・ミネラルが不足すると落ちるの?


上述したように細胞や一部動物を用いた研究で、免疫とビタミン・ミネラルとの関係が示唆されています。

一方、免疫とビタミン・ミネラルに関するヒトで行われた研究は限られており、実際にビタミン・ミネラルの不足がどの程度ヒトの免疫力に影響を与えるのかは解明されていません。

もちろんIBD患者に焦点を当てた免疫に関する研究も行われていないのが現状です。



IBD患者が食事に関して意識すべきことは?


科学的根拠は限られていますが、ビタミン・ミネラルが免疫システムの重要な役割を担っていることが細胞や動物レベルの研究で示唆されていること、IBD患者ではビタミン・ミネラルが不足しがちになりやすいことから、寛解期で狭窄リスクがない場合は、一般的に、様々な種類の健康的な食べ物(野菜・フルーツ・豆類・魚介類など)を日々の食事に取り入れていくことが勧められます。日々食べる食材が限定的になると、摂取できるビタミン・ミネラルも限定的になることから、食材のバラエティ(多様性)がとても重要です。


IBD患者で不足しがちなビタミン・ミネラルとそれらが含まれる食材については以下の表をご参照ください(冒頭のリンク記事からの抜粋です)。


※IBD; 炎症性腸疾患、UC; 潰瘍性大腸炎、CD; クローン病

Table 3. Key micronutrients commonly at risk of deficiency in patients with IBD(2)を一部改変

*30-49歳の食品摂取基準を記載しました。他の年齢の摂取目標については下記リンクからご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf



なお、食材のバラエティを増やしたいけど消化器症状に不安があるという場合は、自分が摂取したい食べ物を少量から試していく方法がお勧めです。もちろん症状が悪化した場合は必要に応じて主治医に相談することが大切です。


可能な範囲で、少しずつ、食材のバラエティを増やしてみてはいかがでしょうか。



参考文献

(1) Weisshof R, Chermesh I. Micronutrient deficiencies in inflammatory bowel disease. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 18(6):576-581, 2015. 

(2) Halmos EP, Gibson PR. Dietary management of IBD—insights and advice. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 12(3):133-146, 2015. 

(3) Hwang C, Ross V, Mahadevan U. Micronutrient deficiencies in inflammatory bowel disease: From A to zinc. Inflamm Bowel Dis. 18(10):1961-1981, 2012.