みなさんこんにちは。今回は、先日Cellという非常に有名な学術誌に掲載された口腔内の感染と腸の炎症に関する研究の内容を紹介させていただきます。
ちなみにコミュニティでも投稿・コメント頂いている栄養学博士の杉原さんも執筆者の一人です。
これまで、口腔内の感染が、口腔内以外の病気や炎症性腸疾患に対してどのように影響を与えてるのかはわかっていませんでした。一方で、クローン病などでは、口腔内の炎症を経験される患者さんも多く、何かしらの関係があるのでは??とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回、この研究では、マウスを用いて、歯周炎が腸の炎症を悪化させることやそのメカニズムの一端を示しています。
歯周炎と腸の炎症の関係
具体的には、2つのプロセスが関わっているとのことです。
1点目は、歯周炎が、特定の環境下で人体に悪影響を及ぼす菌(pathobionts)を口の中で増殖させ、それらの菌が、腸まで移動し、腸において単角食細胞と呼ばれる細胞を刺激し、炎症引き起こすというプロセスです。(図の青色の矢印)
2点目は、歯周炎が、pathobiontsにより活性化される細胞(Th17 Cell)を口腔内で増やし、このTh17 Cellが炎症を起こしている腸に移行し、口腔内から移動したpathobiontsによって活性化されることで炎症につながるというプロセスです。(図の緑の矢印)

(図は参考文献のGraphic Abstractを引用)
また興味深いことにTh17 Cellは、もともと腸にいる細菌には活性化されなかったとのことです。
以上から、歯周病のような口腔内の感染が、pathobiontとT cellを通して、腸の炎症を悪化させていることが示唆されました。
少しややこしい説明になってしまいましたが、口の健康と、腸の炎症の関係は非常に興味深いですね。今後はヒトでも同じことが起こっているのかについての検証も期待されます。
IBDの病態の解明や新しい治療法にも繋がる可能性もあり、今後の研究動向に注目ですね!
また興味深い研究があればGコミュニティ内で取り上げていきたいと思いますー。
参考文献:
Kitamoto S, et al. The Intermucosal Connection between the Mouth and Gut in Commensal Pathobiont-Driven Colitis. Cell. Available online 16 June 2020. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0092867420306814