専門家の記事

みなさんこんにちは。以前、IBDと食物繊維についてまとめた記事は、今も多くの方に閲覧されており、改めてIBD患者さんの関心の高さを感じています。

 

そこで2回に分けて食物繊維を紹介していきたいと思います。今回は食物繊維概要と消化器症状に対する影響について、次回は最新の食物繊維のIBDに対する科学的なエビデンスについてです。


では早速、今回のテーマである食物繊維の概要や消化器症状の影響についてみていきましょう。

 


食物繊維とは?

一般的に食物繊維 (Dietary Fiber)とは、人間の体で消化されない植物由来の炭水化物やリグニンなどを示します(1)。最近は、機能性食物繊維 (Functional Fiber)という言葉を耳にすることも多いと思いますが、これは、身体にとって有益な機能を有する消化されない炭水化物のことを指します。

 

IBDの治療における食物繊維の摂取については、活動期では消化管の活動を亢進するため控えることが推奨されていますが、寛解期については、狭窄などのリスクがある患者さんを除き、積極的に摂取することが推奨されています。



食物繊維の種類と消化器症状への影響

では、具体的に食物繊維にはどのような分類があり、それが消化器症状にどのような影響を与えるのかをみていきましょう。

 

これまで食物繊維は水に溶けやすい/溶けにくい(solubility:水溶性)という機能で分類されることが一般的でした。しかし近年、特に消化器疾患の領域では、粘着しやすいかどうか(viscosity:粘着性)と大腸で腸内細菌に発酵されやすいか(fermentability:発酵性)という機能に注目が集まっています(2)。これらの機能を踏まえた食物繊維の分類を以下の表にまとめました。

 

表 食物繊維の種類と消化器症状への応用

参考文参考文献3より作成


このように食物繊維は水に溶けるか溶けないか、腸内細菌に発酵されやすいかされにくいか、粘着性が高いか低いかにより、下痢や便秘に対する効果が異なります。

 

また、一つの食品には、様々な種類の食物繊維が入っているのが一般的で、その効果も摂取量によって異なる点にご留意ください。

 

なお、近年様々なサプリメントが開発されているイヌリンなどの水溶性/発酵性/低粘着性の食物繊維については、急激に摂取量を増やすと、腹痛、腹部の膨満感、ガスに繋がることがあると言われています。これは、まさしくGコミュニティでもよく取り上げているFODMAPが原因で引き起こされます。

 

イヌリンなどの水溶性/発酵性/低粘着性食物繊維を摂取する場合は、1日に1から3gの食物繊維を1-3日かけて増やしていきましょう(3)。一方、特定の食品を食べて消化器症状が続く場合は、逆に摂取を控えることも必要になります。

 


おわりに

今回は食物繊維の分類と各食物繊維の消化器症状への影響について解説しました。一重に食物繊維と言っても様々な種類があることがお分かり頂けたと思います。また各野菜を食べて実際に消化器症状が現れるかどうかは患者さん個々人で異なります。


ぜひ消化器症状を確認しながら、ご自身の症状や状況に応じた食物繊維を選択頂けましたらと思います。


またもし何か質問・疑問等あればお気軽にコメントを頂けましたらと思います。

 

次回は、食物繊維のIBDに対する効果について最新のエビデンスをまとめて紹介できればと思いますので楽しみにお待ちくださいー。

 


参考文献

(1) National Academy of Sciences, Engineering, Medicine. Dietary, functional, and total fiber in: Dietary Reference Intakes for Energy Carbohydrate, Fiber, Fat, Fatty Acids, Cholesterol, Protein, and Amino acid. Washington, DC: National Academies Press; 2005; chap 7:339-421.

(2)MacRoie JW. Evidence-Based Approach to Fiber Supplements and Clinically Meaningful Health Benefits, Part 1 What to Look for and How to Recommend an Effective Fiber Therapy. Nutr Today. 2015 Mar; 50(2): 82–89.

(3) Issokson K. DIGID Corner Inflammatory Bowel Disease Workinggroup Demystifying the Complexities of Fiber and Inflammatory Bowel Disease. Dietitians in Medical Nutrition Therapy, Academy of Nutrition and Dietetics, Volume 39-3.