みなさまこんにちは。前回の食物繊維の記事では食物繊維の概要や種類と消化器症状の関係について紹介しました。今回は、IBDに対する食物繊維の最新のエビデンスを紹介したいと思います。
クローン病の再燃と食物繊維の摂取量の関係
旧来は特にクローン病においては寛解期も食物繊維の摂取量を制限する食事指導がされることが多かったのですが、現在は狭窄リスクがある場合を除き、寛解期は健康の方と同じレベルの食物繊維の摂取量が推奨されることが多いです。
その根拠の一つとなっているのが2016年に発表されたアメリカで行われた寛解期のクローン病患者1130名を対象とした研究です。
この研究では、試験開始から6ヶ月間の食物繊維や全粒製品の摂取量やIBDの病状を示すスコアなどを確認しました。その結果、クローン病患者で食物繊維の摂取量が多かった群では低かった群と比べ再燃回数が有意に少なかったことが確認されました。
フルーツの摂取と腸内細菌や回腸嚢炎の関係
また腸内細菌と食物繊維の関係についても研究が積極的に行われています。
2019年に発表された潰瘍性大腸炎患者の回腸嚢炎(外科手術を行った後に便を貯める袋に起こる炎症)とフルーツの摂取量に関する研究(2)では、フルーツの摂取量が多いほど腸内細菌の多様性や善玉と考えられる細菌の数が多いことが確認され、フルーツの摂取量が少ない患者群で回腸嚢炎の発症率が高いことが確認されました。
食物繊維と腸内細菌に関する研究は動物研究も含め活発に行われていますので、今後さらにエビデンスが蓄積されると思われます。
まとめ
以上のような研究より、IBDと食物繊維については様々な研究動向を踏まえ、一般的に寛解期においては、狭窄等のリスクがない場合は、健康の方と同程度の食物繊維の摂取量を目標に食物繊維を増やしていくことが推奨されています。
ただ、患者さんによって、食物繊維の種類によって腹痛・下痢などの消化器症状が出ることもありますので、ぜひ少量から少しずつ、消化器症状が発生するかを確認しながら、食物繊維の摂取量を増やすことが勧められます。
また食物繊維や腸内細菌については興味深い研究があれば紹介させていただきます。
参考文献
(1) Brotheron C.S., et al. Avoidance of Fiber Is Associated With Greater Risk of Crohn's Disease Flare in a 6-Month Period. Clin Gastroenterol Hepatol. 2016 Aug;14(8):1130-6.
(2) Godny L., et al. Fruit Consumption is Associated with Alterations in Microbial Composition and Lower Rates of Pouchitis. J Crohns Colitis. 2019 Sep 27;13(10):1265-1272.