みなさまこんにちは。今回は、日本でも特に心臓などの循環器系の疾患に対して注目を集めている地中海食のIBDに対する最新の研究が学術誌に掲載されていましたので紹介させて頂きたいと思います。
地中海食とは?
地中海食とは、地中海諸国の伝統的な料理で、オリーブオイルや全粒穀物、野菜、果物、豆類、ナッツ類が豊富な食事です。“地中海”と聞くと全く我々の食事と関係のない食事に聞こえますが、実は健康的な日本食とも近い部分があります。
以下の絵は、地中海食を簡易的に示したものです。このように野菜とフルーツが多く、全粒製品(玄米・全粒パンなど)、豆類(大豆製品など)、魚などがベースの食事です。厳密には、ここに赤身肉・加工肉・菓子類の制限摂取やオリーブオイル・ナッツなどの推奨などが加わりますが、みなさまの食生活と近い部分も多いと思います。

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地中海食が注目される理由?
地中海食の有用性は様々な臨床試験で実証されており、心血管疾患、がん、パーキンソン病、アルツハイマー病のリスクを低下させることなどが分かっています。あらゆる疾患においてもっとも科学的エビデンスが確立された食事療法と言っても過言では無いと思います。そしてIBDに地中海食が有益なのか?という点に関心が高まっています。
今回報告された試験の概要
Inflammatory Bowel Diseasesという雑誌に今年の5月に発表された試験では、84名の潰瘍性大腸炎患者と58名のクローン病患者を対象とし、6ヶ月地中海食を行なった後の栄養に関する指標や症状に対する効果を確認しました。その結果、IBD患者のBMIや腹囲周囲径、脂肪肝の改善に加え、開始時と比べて増悪患者の割合が低下し、炎症マーカーの改善が確認されました。
今回の試験はプラセボ群(地中海食を取らなかった群)と比較するような試験ではなかったこともあり、この試験だけで地中海食によりIBDの症状が改善されると結論づけることはできませんが、現在行われている地中海食のIBDに対する効果の検証を目的とした大規模な臨床試験などにより、その効果やメカニズムが明らかにされることが期待されます。
IBD患者が地中海食を取り入れる上での留意点は?
地中海食は野菜、全粒製品、豆類など食物繊維が多いことが特徴です。活動期から寛解期に入ったばかりの患者さんについては、少しずつこれらの食品の摂取量を増やしていきましょう。急激に増やすと腹痛や下痢の消化器症状に繋がる可能性があります。
また、狭窄リスクがある方については、低食物繊維食が推奨されていますので、地中海食が合わない可能性が高いです。必要に応じて主治医の先生と相談してみてください。
一方、魚やオリーブオイルなどについては比較的食生活に導入しやすいかもしれませんね。
その他何か質問等ございましたお気軽にご連絡ください。また興味深い研究があればコミュニティで紹介させて頂ければと思います。
参考文献:
https://academic.oup.com/ibdjournal/advance-article/doi/10.1093/ibd/izaa097/5841910