CC Japan2月号でプロバイオティクスについての記事を寄稿させていただいことと、日頃からプロバイオティクスについて質問を多く受けることから、今回はプロバイオティクスについて改めてまとめてみたいと思います。
まずプロバイオティクスや似たような言葉であるプレバイオティクスなどの違いについては以前こちらの記事で詳しく紹介したのでご覧ください。
プロバイオティクスがIBDに対して注目を集めている背景
IBDでは以前より、マウスを用いた研究などで、I B Dでは腸内細菌のバランスが乱れていることや、腸内細菌がIBDの発症や悪化に関わることが示唆されてきました。そこで、この腸内細菌を整えることでIBDに対して何かしらポジティブな影響を与えられるではないか?という考えからプロバイオティクス(体に有用な善玉菌の摂取)の研究が盛んに行われてきました。
プロバイオティクスに関しての科学的根拠やガイドラインでの位置付け
ここが非常にややこしい点で以前コミュニティ内でも患者さんから質問がありました。例えば海外では潰瘍性大腸炎の活動期にある特定のプロバイオティクス (VSL#3)の寛解導入効果が複数の研究で認められており、欧州のガイドラインでも推奨されています。
しかし、このVSL#3というプロバイオティクスは日本では販売されていません。またプロバイオティクスは、そこに含まれる菌の種類や数、組み合わせによって腸内細菌への影響が異なることが分かっています。(ちなみに別の記事で杉原さんも解説していましたが、VSL#3は菌数が8種類の細菌が4500-9000億個含まれているのに対し、日本の整腸剤は1-3種類の細菌が1-10億個くらい含まれる程度です!)
さらに日本でプロバイオティクスについてまだ十分な研究が行われていないことから、日本のガイドラインにおいてプロバイオティクスは推奨されていません。
プロバイオティクスの研究内容については以前杉原さんが詳しくまとめられているのでご興味ある方はこちらの記事をご確認ください。
プロバイオティクスは摂取すべきか?その方法は?
上記のよう科学的根拠が十分ではありませんが、海外はもちろん日本でも医療従事者の間でIBDに対して腸内細菌を整えることは有用と考えられており、腸内細菌のバランスを整える目的で、整腸剤が処方されることが多いです。
また腸内環境を整えることを目的として、ヨーグルトや納豆、糠漬けなど食品に含まれる善玉菌や善玉菌の餌となる食物繊維などが管理栄養士から推奨されることも多いです。
なお、上記のような食品を急に大量に食べると下痢などの消化器症状が出ることもあることから、少量ずつお腹の具合を確認しながら徐々に摂取量を増やしていきましょう。
まだまだプロバイオティクスや腸内細菌については解明されていないことも多いので、研究の発展を期待しながらも、ぜひ自分のできる範囲で腸内環境を整えてみてはいかがでしょうか?