専門家の記事

別の記事で患者さんから小麦製品と乳製品についての質問がありました。気になる方も多いかと思いますので投稿の形で回答いたします。


小麦製品


小麦製品を食べることがIBDの発症や増悪につながるという科学的根拠はありません。一方でIBD患者さんに限らず、一部の方では小麦製品に含まれるグルテンによって、腹痛や下痢などの消化器症状が起こることがあり、グルテン不耐症と呼ばれます。


これまで小麦製品を食べるとお腹の調子が悪くなることを経験されている方は、一度小麦製品を控える、もしくはグルテンフリー製品に変えてみて、消化器症状に変化が現れるかを確認されることが良いかと思います。


小麦製品を食べて消化器症状が出ない方は普通に食べて問題ないと思います。特に狭窄がない場合は、寛解期にはビタミン・ミネラル・抗酸化作用を有するファイトケミカルが豊富に含まれる全粒製品(玄米や全粒粉パン)なども勧められます。消化器症状が出ないことを確認しながら徐々に摂取量を増やしていきましょう。


乳製品


乳製品にはIBD患者さんで頻度の高い骨粗鬆症のリスクを低下させたり、体を健康に保つためにカルシウムが豊富に含まれている大切な食品です。また乳製品についてもこれまでの研究から乳製品の摂取自体がIBDの病態を悪化させないと考えられています。


一方で、乳製品に含まれる乳糖を消化吸収するために必要なラクトースと呼ばれる消化酵素の活性化が低い方では、乳糖により消化器症状が引き起こされる方(乳糖不耐症)がいます。実際にIBD患者さんでは健康な方と比べて乳糖不耐症の方が多いことも知られています。


乳製品を摂って消化器症状が出ない場合は問題ありませんが、乳製品で消化器症状が出る方は乳製品の種類や摂取量を工夫してみましょう。各乳製品によって乳糖の含有量が異なることから、牛乳が飲めなくてもヨーグルトやチーズは大丈夫という方も多くいます。


また乳製品には飽和脂肪酸という牛肉や豚肉に含まれるものと同様の動物性の脂質が多く含まれているため、特に活動期など消化管を休ませたい場合は低脂肪乳や低脂質の乳製品を選びましょう。バターや生クリームなどにも飽和脂肪酸が多く含まれています。


個別の食品についてどう考えれば良いの?という点について疑問や悩みも多いかと思います。また何かご不明点あればお気軽にコミュニティでご質問ください。