専門家の記事

こんばんは、ジーケアの鈴木です。


最近、様々な疾患で、治療継続をサポートするアプリが登場しています。


IBDでもヤンセン社が提供しているIBDサプリは有名ですね。ただ、通院時の症状記録のサポートが主であり、アプリを使用することで症状改善が示されているわけではありません。


皆さん、症状が悪化する頻度が減ったり、通院や入院回数を減らすことができるアプリがあると聞くとどう思われますか?


2017年にLancet(医学界で最も権威のある医学誌の1つ)に、IBD患者さんが定期的に症状をアプリに入力することで、定期的に通院するよりも入院回数、通院回数を抑制し、薬のアドヒアランス*が優れているという論文報告がありました。


*アドヒアランスとは、「患者さんが積極的に治療内容の決定に参加し、その方針に基づいて治療を受けること」を指します。そのことから「薬のアドヒアランス」とは、「患者さん自身が積極的に必要な薬を理解して服薬を遵守すること」です。

これに対して従来よく使用されてきた「コンプライアンス」は、患者さんの受け身(医師が指示するから、など)の姿勢による服薬順守を意味します。


その論文の内容をご参考までに以下にお示ししますね[1]。


<論文の概要>


1. 試験実施国:オランダ


2. 実施施設:大学病院2施設、大病院2施設


3. 参加患者さん:上記病院に通院するIBD患者さん909名


4. 試験概要:アプリで症状を記録する患者さん約465名と普通に通院する患者さん約444名に分け、12か月にわたり追跡。


アプリを使用する患者さんは、3か月連続で寛解を維持している場合は3か月に1回の入力、症状が増悪(再燃)している場合は1週間に1回入力。


試験は無作為化群間比較試験と呼ばれる信頼度の高い方法で実施。


5. 補足事項:試験期間中、患者さんはいつでも担当の医師、看護師に電話、テキスト等で質問することができる。


また、アプリには患者さんの教育用に様々なコンテンツが搭載されている。


6. 結果:定期通院と比較して、アプリ使用群では入院回数50%減少、症状を悪化させることなく通院回数も34%減少、アドヒアランスの向上が確認され、アプリによる症状管理の有用性が示された。


日本でも大学病院がアプリを使って臨床試験を行う取り組みが始まってきました。

https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=67642


IBDサプリと何が違うのか興味深いところです。


オランダのケースでは、患者さんのアプリ使用のモチベーションを高めるため、アプリ内に様々な教育用コンテンツが含まれていたり、患者さんがいつでも医師、看護師等に電話やテキスト等で質問できるなど、非常に手厚いサポートが用意されており、その上での高い効果でした。


どのようなコンテンツなのか、詳細の発表が楽しみですね。


参考文献

  1. de Jong MJ, et al. Telemedicine for management of inflammatory bowel disease (my IBD coach): a pragmatic, multicentre, randomised controlled trial. Lancet 2017


執筆: 鈴木紀之(ジーケア)

監修: 堀田 伸勝(消化器専門医・医学博士)