質問&おしゃべり
みなさん、こんにちは!メリ医です♪
11/10に宮﨑さんが職業リハビリテーション学会にて、Gコミュニティメンバーと行ったRDD適職イベントの取り組みを発表してきてくれました!
我らがジーケア以外にも、各地域の障害者職業総合センターの方々や高齢・障害・求職者雇用支援機構の方々、病院や一般企業の方々も論文の発表をされおり、難病患者・障害者をはじめ、通常の就労が困難な方々に対するサービスや支援の形、各企業の取り組みが本当に色々あるのだと、メリ医も勉強になりました〜!!!
難病当事者・障害者の当事者が不在の発表が多かったのは残念に感じたので、もっともっと当事者の声を伝えて行く必要があると感じました!
また来年もジーケア・Gコミュニティの取り組みを発表できたらいいな〜〜♪
当事者側では、どうやって情報に辿り着いたら良いのかわからないし、どんな支援があるのかもわかりづらいのが現状だと思います。
皆さんが就労に関して困った時に役立ちそうな情報がいっぱいあったので、今後そういった情報もどんどん共有していきますね!
これからも、Gコミュニティの就労への取り組みにご期待ください!
(来年1月には、就労イベント第三弾がありますよ〜♪)
当日発表に利用したスライドデータや、Gコミュの関連投稿も含めて、論文の内容を共有いたします。
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炎症性腸疾患患者とともに作った「RDD(世界希少・難治性疾患の日)」就労イベント発表へ向けての取り組み
宮﨑 拓郎(株式会社ジーケア 代表取締役)
中金 竜次(就労支援ネットワークONE)
1 はじめに・目的
炎症性腸疾患(以下「IBD」という。)とは、腸に炎症を起こす病気の総称で、一般的に指定難病の潰瘍性大腸炎とクローン病を指す。
「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班1)によれば、潰瘍性大腸炎患者は日本国内に約22万人、クローン病患者は約7万人いる。
株式会社ジーケア(以下「弊社」という)は、IBD患者と家族のためのオンラインサイト・Gコミュニティ(以下「Gコミュ」という。)を運営しているが、IBDは体調に波があり見た目では病気だと分からないため、治療と就労の両立で悩む患者も多い。
そこで、2021年2月28日にオンラインで実施された「RDD適職」という世界希少・難治性疾患の日就労イベントへ向けて、IBD患者でプロジェクトチームを作り、コミュニティ内でアンケートや就労相談会を実施、結果をイベントで発表した。
本発表では、IBD患者とともに作ったイベント参加の事例報告を行い、今後の展望を述べる。
2 Gコミュにおける「RDD適職」プロジェクトの詳細
(1) 背景
Gコミュは、IBD患者と家族のためのオンラインコミュニティであり、2021年7月末時点で登録者数は1700名を超えている。
また、RDD(世界希少・難治性疾患の日)とは、Rare Disease Dayの略称で、毎年2月最終日に行われる希少・難治性疾患の啓発イベントである。
2020年より、弊社代表が「RDD適職」という就労問題をテーマとしたRDDイベントへの参加を行っていたが、より広く社会にIBD患者の就労問題を知ってもらうため、そして治療と仕事の両立について患者同士の知恵を共有するためにも、Gコミュに登録しているIBD患者自身の参加が必要だと考えた。
2020年9月に、就労支援ネットワークONEと弊社との共催で「コロナ禍におけるIBD患者キャリア実践ワークショップ」を連続3回で行った。
ワークショップ終了後、就労への関心が高い患者5名に弊社から連絡し、2021年の「RDD適職」参加プロジェクトチームを立ち上げた。
なお、2021年「RDD適職」は、2月28日13:00‐16:30の予定で実施され、第1部はIBD、パーキンソン病など4つの患者団体による発表と座談会、第2部は疾患に分かれての交流会という構成であった。
(2) 「RDD適職」参加に向けての取り組み
ア ミーティング
2020年11月10日に、弊社代表と5名のIBD患者、就労ネットワークONEで初回オンラインミーティングを行い、どのような発表を行うのか、そのための準備等を話し合った。その後、約1ヶ月に1回のペースでオンラインミーティングを実施した。
また、RDD適職に参加する他の4つの患者団体とのオンラインミーティングも、イベント当日までに2回行われた。
プロジェクトに参加したIBD患者の詳細は以下の通りである(表1)。
なお、Eさんは体調悪化により、プロジェクト途中で参加を辞退した。
そのため、「RDD適職」当日は4名のIBD患者と弊社代表で発表を行った。
イ アンケート調査
2021年1月に、Gコミュ内で「IBD患者の就労に関する実態調査」というアンケートを行った。
3問の記述式アンケートで、設問は全てプロジェクトチームのIBD患者が相談して決定した。
設問は以下の通りである。
①会社へ病気を知ってもらいたい時や通院等の相談をしたい時、どの部署と相談するか。相談の結果や気づいたこと。
②体調悪化時など、仕事を少しセーブしたいと考えた時に取る具体的な行動は何か。職場に相談するか。相談の結果や気づいたこと。
③頑張りたい、貢献したい気持ちはあるが病気が制約となり他の人と同じようには頑張れない時に、どのように会社や組織、周囲の人に貢献しようと考えたり行動したりしているか。
最終的に35名から回答が得られ、「RDD適職」では回答内容を集約・分析した結果を報告した。
ウ 就労ピアコーチ
初回ミーティングにて、IBD患者Eさんにより提案された取り組みである。
就労に関して直接相談したい患者と、自らの経験を元に話を聞きアドバイスができる患者をマッチングし、数名でオンライン面談会を行う。
相談希望者をGコミュ内で募り、2021年1月に2回実施された。
相談者からは大変好評な取り組みであり、面談終了後にはGコミュにて感想やお礼の言葉が投稿された。
<関連リンク>
病気の伝え方・キャリア・工夫ー就労ピアコーチ内容共有①
https://gcarecommunity.com/article/548
開示/非開示・周囲の理解を得る方法―就労ピアコーチ内容共有②
https://gcarecommunity.com/article/569
エ 発表内容決定とスライド作成、発表練習
2021年1月に実施したアンケートの回答結果を踏まえ、発表内容の検討がプロジェクトチーム内で行われた。
発表時間は質疑応答を含めて1団体15分であり、Gコミュでは患者4名で担当パートを決め、それぞれ3、4枚程度のスライドを作成することになった。
作成したスライドは弊社で合体し、最後のミーティングでは実際にスライドを操作しながら全員で発表練習を行った。
<関連リンク>
RDD発表内容スライド
https://gcareglobal.com/work_ibd/
(3) 「RDD適職」当日
2021年「RDD適職」はオンライン配信で実施された。
第1部座談会の同時視聴者数は常時60名程度であり、アーカイブ動画は公開後2週間で450回程度の視聴回数に到達した。
Gコミュプロジェクトチームでは、IBD患者の就労の課題、アンケート結果に加え、「IBD患者の働き方は、リスクマネジメントを行い、ワークライフバランスを大切にする先進的な働き方だとも言える。
難病患者が働きやすい環境は、病気や子育て、介護など様々な事情がある人にとっても働きやすい環境である」などの考察を発表した。
第2部の交流会では、弊社は消化器疾患の交流会を担当し、プロジェクトチームの患者も参加した。
アットホームな雰囲気で話せるように、5、6名程度の小グループを3つ作成したところ、それぞれのグループで就労に関して活発な意見が交わされた。
(4) 「RDD適職」後、振り返り会への参加
「RDD適職」から数週間後、参加難病団体と就労ネットワークONE、弊社で振り返り会を行った。GコミュプロジェクトチームからもIBD患者2名が参加し、当日の反省や今後について他団体と意見の交換等を行った。
3 プロジェクトに参加した患者の声
「RDD適職」終了後、発表を行った4名の患者のうち、3名から感想がGコミュに投稿された。
その内容から【多様性】【共通性】【伝える努力】というキーワードが抽出された(表2)。
4 考察・今後の展望
分析結果から、IBD患者とともに作った「RDD適職」プロジェクトは、参加した患者自身も【多様性】【共通性】【伝える努力】といった気づきを得て、就労に関して振り返る機会となったと言える。
また、Gコミュ内でプロジェクトチームがアンケートや就労ピアコーチといった取り組みを行い、参加レポートを投稿したりしたことによって、実際に発表をした4名だけではなく、アンケートやピアコーチへの参加を通して、より多くのGコミュ登録者の就労問題に関する興味や参画を促すことができた。
患者とともに作ったプロジェクトならではの成果と考えられた。
一方で、今回「RDD適職」プロジェクトに携わった5名のIBD患者は、全員治療と就労の両立をしながら、「RDD適職」のためにミーティング参加やスライド作成を行った。スケジュールは余裕のあるように作成し、体調悪化時には他の人に引き継げるようにしておくなど、フォロー体制の構築が必要である。
また、トイレ休憩の確保に加え、患者が負担感なく参加できる時間配分などの配慮が患者参加型のイベントには求められるであろう。
今後も弊社では、病気の情報提供のみならず、IBD患者自身が参加し、患者が自己肯定感・自己効力感が持てるようなイベントや患者を巻き込んだプロジェクト型の企画を行っていきたい。
さらに、当事者・支援者、行政などと連携し、難病患者の就労に関する課題を広く社会に知ってもらえるよう活動を行っていきたい。
【参考文献】
1)「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班「潰瘍性大腸炎の皆さんへ 知っておきたい治療に必要な基礎知識」,(2020)