みなさまこんにちは。今回は別の投稿にいただいていた患者さんからの以下の質問に対する回答です。
<質問>
祖母の時代には黒豆を煮るとき、ぬか漬け等に古い釘を使用していたそうです。色が良くなるし、鉄分がとれるんだと話していました。
南部鉄器の鉄瓶を購入しようとみていた時にふと思ったのですが、お湯を沸かすときや料理に鋳物を入れたら多少なりとも鉄分補給の効果はありますか?
鉄玉子という商品では、1Lのお湯を沸かしても0.05mgと書いてありました。
50mgの鉄剤と比較してしまうと1000リットル飲まないといけないので、やはり気休め程度ですかね。手軽ではあると思うのですが、いかがでしょうか。
<回答>
ご質問いただきありがとうございます。鉄分の摂取に関する質問ですね。結論から言うと実際に貧血を改善するほどの効果は確認されていません。
カンボジアでの鉄の魚「LUCKY IRON FISH」に関する研究
実はこの手法はカンボジアなどの開発途上国において低コストで貧血を解消できる可能性がある手法として注目が集まっていました。

実際この「LUCKY IRON FISH」と呼ばれる魚の形をした鋳型を調理などに入れることで貧血を解消できるのではと注目が集まっていました。
2017年に報告された論文では、カンボジアで軽度から中等度の340名の貧血の女性をLUCKY IRON FISH群、サプリメント群(18mg/1日)、コントロール群に分けて、投与開始前と6ヶ月後と12ヶ月後のヘモグロビンの比較を行いました。その結果、LUCKY IRON FISH群も、サプリメント群もコントロール群と比べて優位なヘモグロビンの改善は認められませんでした。
また、サプリメントは細胞内で鉄の貯蔵に関わる血清フェリチンの濃度を優位に改善したものの、LUCKY IRON FISHでは、血清フェリチンの改善も認められませんでした。
このLUCKY IRON FISHをIBD患者さんに投与した研究はこれまで行われていないのですが、上記を踏まえると南部鉄器を使用しても貧血を改善するほどの鉄分の補給効果はないと考えられます。
鉄分が豊富に含まれている食材
鉄分については、食事で鉄分が含まれている食品の摂取を意識することが大切で、肉などの他にイワシ・カツオなどの魚や牡蠣などの貝類、そしてほうれん草や小松菜などの野菜に多く含まれます。
また鉄分はビタミンCと摂取すると吸収率が高まるため、オレンジやブロッコリーなどビタミンCが含まれる食材と組み合わせて食べましょう。
鉄のサプリメント
なおこれまでの研究で、貧血時には鉄のサプリメントが推奨されていますが、貧血がない状態での鉄分のサプリメントの摂取のIBD患者さんに対する効果は検証されていません。
ですので、普段は食事からの摂取を意識し、血液検査で貧血と判定された場合に必要に応じてサプリメントを取ることが一般的に推奨されています。
今回もご質問いただきありがとうございました。また何かありましたらお気軽にご質問いただければと思いますー。
参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28615257/