Gコミュニティの宮﨑です。
今回は以前ヒッキーさんからいただいた質問にお答えしたいと思います。
<質問>
低フォドマップの食事は症状を抑えるのに効果があるのでしょうか?
<回答>
ご質問いただきありがとうございます。低フォドマップには寛解期に食事起因で消化器症状を有する患者さんの消化器症状を改善する可能性が研究で示されていますが、再燃期には実施しないことが勧められますし、IBDの寛解導入に関してエビデンスはありません。
IBD患者さんにおける寛解期の消化器症状
約1/3のIBD患者さんは炎症が落ち着いている寛解期においても腹痛や下痢などの消化器症状を有していると言われています。消化器症状の要因としてはストレスなどを原因と感じられる方もいれば、食事が原因で消化器症状が起きる患者さんも一定数います。
このような寛解期に消化器症状を経験する可能性が多い患者さんに期待されているのが低フォドマップ(FODMAP)食です。
低フォドマップ食の寛解期IBD患者さんに対する効果
2020年に発表された寛解期のクローン病と潰瘍性大腸炎患者を対象とした臨床試験では、4週間低フォドマップ食を続けた結果、52%のIBD患者さんで消化器症状の軽減が確認されました。特に下痢、腹痛、膨満感、疲れ、吐き気などの改善が確認されました。
同様にこれまで行われた複数の研究をまとめて解析した研究でも、寛解期のIBD患者さんの消化器症状に対する有意な効果が確認されています。
このように低フォドマップ食は、寛解期IBD患者さんの消化器症状を改善する可能性がありますが、これまでの研究では、約50%のIBD患者さんで効果があると考えられており、逆に言うと二人に一人は効果が得られない可能性があります。
効果がない場合は、他の食事療法やメンタル面のサポート(臨床心理士など)を検討する形となります。
なお再燃期については、IBD患者さんでは低栄養状態のリスクが高くなりますので、再燃期には行わないことが一般的に推奨されます。
低フォドマップ食の具体的な方法
低フォドマップ食の具体的な実践方法については、以前コミュニティ内で投稿しました二つの記事(基礎編・実践編)にまとまっています。
低フォドマップ食は、大きく3つのステップからなります。
1. 制限フェーズ
まず初めにFODMAP(フォドマップ)と呼ばれるIBSやIBDの患者さんで消化器症状を引き起こしやすいと考えられている5つの食品グループを取り除き、消化器症状が改善されるかを確認します。
2. チャレンジフェーズ(再導入期間)
もし消化器症状が改善した場合は、チャンレンジフェーズ(再導入期間)と呼ばれるプロセスに進みます。ここでは、5つの食品グループのうち、どのグループの食材・食品が消化器症状を引き起こすのか(いわゆる"トリガー食")を、FODMAPの各食品を食生活に再導入して、消化器症状が出るかを確認・把握します。
3. 維持フェーズ
チャレンジフェーズで確認した消化器症状のトリガーとなる食材や食品の量や種類に気をつけながら、栄養バランスの良い食生活を送ります。
ここで大切なポイントは、低フォドマップ食は、フォドマップ(FODMAP)が含まれるすべての食品を取り除く期間(制限フェーズ)をずっと続ける食事療法ではないと言うことです。
低フォドマップ食の効果が制限フェーズで確認できた場合は、必ずチャレンジフェーズに進みましょう。制限フェーズをずっと続けることで栄養不足が懸念されます。
低フォドマップ食についてもしご不明点等あればお気軽にご連絡ください。
なお明日は「IBD患者さんのための食事のポイントと調理テクニック」開催となります。
https://gcarecommunity.com/article/823
すでに40名以上の方に事前登録いただき、質問も非常に多くいただいております。全ての質問に答えられるかわかりませんが、可能な限り多くの質問に中東先生と一緒にお答えできればと思います。
ご参加される方はぜひお楽しみにしていてください!