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今回は追加で質問をいただいた「ビタミンDと日光浴」、「寒い時期の再燃」についてこれまで行われてきた研究をご紹介させていただきます。


ビタミンDと日光浴

ご存知の方も多いと思いますが、ビタミンDを獲得する経路としては、食物の摂取と日光浴があります。

日光浴を通じたビタミンD生成のメカニズムとしては、皮膚にいわゆるビタミンDの元となるような物質が蓄えられていて、その物質に太陽が当たることで、体が活用できるビタミンDの形となり、その物質が肝臓・腎臓での代謝を経て活性化ビタミンDと呼ばれる実際にカルシウムやリンの吸収を助ける作用を発揮する形となります。


日光浴とIBD、寒い時期の再燃

IBDと日光浴については、小児IBD患者を中心にいくつか研究が行われてきました。

例えば、2019年に発表されたオーストラリアの試験では、17歳以下のIBD患者と、同年齢層の健康な人を対象として、太陽に当たった時間などを比較して分析したところ、太陽に当たった時間が長いほどIBDのリスクが低下したことが確認されました(1)。ですが、この試験は科学的根拠としては弱い試験設計であり、さらに他の研究も限られていることから、日光浴がIBDリスク低下に効果的なのかについては証明されていません。


また、IBDの季節性(夏・冬での発症・増悪リスクの違いなど)についても、複数の研究が行われてきましたが(2)(3)、季節性がない、夏に発症・増悪が増加、冬に発症・増悪が増加といった様々な結果が出ていて、まだ結論が出ていないのが現状のようです。


どの程度太陽を浴びれば良いの?

上述のように研究が限られていることから、IBD患者がどの程度太陽を浴びれば良いかについて指針はありません。一方、皮膚ガンの発症リスクを心配される方も多いのではと思います。そこで、WHO(世界保健機関)が提唱している、健康な人向けの太陽を浴びる時間の目安を参考までに見てみましょう。


WHOによると、夏には、5-15分程度の太陽の光を週に2-3回、手・顔・腕に浴びるだけで、ビタミンDレベルを保つために十分とのことでした。もちろん住む場所や季節によって紫外線の強さが異なり、さらに人種による差・個人ごとの差があることから、あくまで大まかな目安にしかならないと思いますが、思ったより短い時間と思われた方も多いのではと思います。


1日中、家や職場に引きこもることが多い方は、晴れた日に、少しだけ外を散歩してみてはいかがでしょうか?



参考文献

(1) Elizabeth AH, Anne-Louise P, et al. Higher Sun Exposure is Associated With Lower Risk of Pediatric Inflammatory Bowel Disease: A Matched Case-control Study. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2019 Aug; 69(2): 182–188.

(2) Peng JC, Ran ZH, Shen J. Seasonal variation in onset and relapse of IBD and a model to predict the frequency of onset, relapse, and severity of IBD based on artificial neural network. Int J Colorectal Dis. 2015 Sep;30(9):1267-73. 

(3) Lee GJ, Dotson JL, et al. Seasonality and pediatric inflammatory bowel disease.J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2014 Jul;59(1):25-8. 

(4) WHO: https://www.who.int/uv/faq/uvhealtfac/en/index1.html


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