専門家の記事

米国登録栄養士の宮﨑です。9月に発行された「ニュートリションケア 2026年秋増刊 病態別栄養ケアの疑問解決Q&A55」に寄稿させていただきました。

今回は管理栄養士さん向けの内容を患者さんやご家族向けに要約すると以下のような内容になります。IBDの食事・栄養管理はどんどん変わっているので今後も最新の研究等に基づいた情報を発信していきたいと思います!

**************************
<内容の要約>

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)では、薬による治療だけでなく、日々の食事や栄養管理もとても大切です。一方で、「IBDになったら、この食品は絶対に食べてはいけない」というような、すべての患者さんに共通する食事療法があるわけではありません。病気の状態や症状、合併症、治療内容によって、適した食事は変わります。

潰瘍性大腸炎とクローン病は、どちらも症状が強くなる「活動期」と、炎症が落ち着いた「寛解期」を繰り返す病気です。ただし、潰瘍性大腸炎では主に大腸に炎症が起こるのに対し、クローン病では小腸を中心に、口から肛門までさまざまな場所に炎症が起こる可能性があります。特に小腸は栄養を吸収する大切な場所であるため、クローン病では栄養の吸収が十分にできず、低栄養につながりやすい特徴があります。

症状が強い「活動期」の食事

活動期は、炎症が起きている腸への負担をできるだけ減らすことが大切です。症状が強い場合や腸に狭窄がある場合には、脂質や食物繊維を控えたり、食材を柔らかく調理したりすることがあります。

一方で、炎症があると体内ではたんぱく質が失われやすくなります。そのため、食べられる範囲で肉、魚、卵、大豆製品などから、十分なたんぱく質をとることも重要です。下痢が続いている場合には水分やミネラルも失われやすいため、脱水にも注意しましょう。

症状が落ち着いた「寛解期」の食事

寛解期には、必要以上に食べ物を制限し続けないことがポイントです。

以前は「IBDでは脂質や食物繊維をできるだけ控える」と考えられることもありました。しかし現在は、狭窄などの問題がなければ、野菜、果物などの植物性食品を含むバランスのよい食事が勧められています。また、脂質についても単純に量を減らすのではなく、魚やオリーブオイルなどを食事に取り入れることが勧められています。

ただし、クローン病で狭窄がある場合などは注意が必要です。食物繊維の多い食品を一度に多く食べると、腸につまる危険があります。その場合も「すべて禁止」と考えるのではなく、よく噛む、皮をむく、柔らかく煮る、細かくするなど、調理方法を工夫しながら食べられるものを考えていくことが大切です。

「食べないこと」が低栄養につながることも

IBDでは、腹痛や下痢への不安から「これを食べたら症状が悪くなるかも」と食事量が減ったり、自己判断で多くの食品を避けたりすることがあります。しかし、過度な食事制限を長く続けると、エネルギーやたんぱく質だけでなく、鉄、カルシウム、ビタミンD、ビタミンB12、亜鉛などが不足する可能性があります。

栄養不足は体重だけでは分からないこともあります。体重が変わっていなくても筋肉量が減っている場合があるため、体重の変化だけでなく、血液検査や体組成なども含めて栄養状態を確認することが大切です。

IBDの食事で大切なのは、「何を禁止するか」だけを考えることではありません。その時々の病状に合わせて、必要な制限を行いながら、症状が落ち着いたら少しずつ食事の幅を広げていくことです。

食事で迷うことがある場合や、体重減少、食欲低下、貧血などが気になる場合には、自己判断で制限を続けず、主治医やIBDに詳しい管理栄養士と相談しながら、自分に合った食べ方を探していきましょう。