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潰瘍性大腸炎の治療では、近年、新しい薬が次々と登場しています。選択肢が増えることは患者さんにとって心強い一方で、「ほかの患者さんはどのような薬を使っているの?」「自分に合う薬はどうやって選ぶの?」と疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。

2026年5月にGコミュニティで実施した潰瘍性大腸炎の患者さん153名を対象に、薬の使用状況や治療を選ぶ際に重視したことなどを調査しました。多くの方にご協力いただきありがとうございました。

この記事では、そのうち生物学的製剤などの治療(Advanced Therapy:AT)を使用した経験のある100名の回答を中心に、実際に選ばれている薬や、近年の治療選択の変化をご紹介します。

1.潰瘍性大腸炎の治療薬には、どのような選択肢がある?

潰瘍性大腸炎の治療では、5-ASA製剤やステロイドなどの薬に加え、病状やこれまでの治療経過に応じて、生物学的製剤やJAK阻害薬などが使用されることがあります。

これらの治療薬には、それぞれ異なる特徴があります。

例えば、抗TNFα製剤は、炎症に関わるTNFαという物質の働きを抑える薬です。代表的な薬にはレミケード、ヒュミラ、シンポニーなどがあります。

一方、エンタイビオは腸管への炎症細胞の移動に関わる仕組みに作用する薬で、ステラーラやオンボーは別の炎症経路を標的とする薬です。また、リンヴォックやジセレカのように、飲み薬として使用するJAK阻害薬もあります。

これらの薬は、作用する仕組みだけでなく、点滴・注射・内服といった投与方法や投与間隔なども異なります。

そのため、治療薬を選ぶ際には、病気の状態や過去の治療歴だけでなく、患者さんの生活スタイルや希望も重要な要素となります。

2.最初に選ばれていた薬は?患者100人の処方実態

今回の調査では、ATの使用経験がある潰瘍性大腸炎患者100名に、最初に使用したATについて尋ねました。

その結果、最も多かったのはレミケード(22.0%)で、次いでエンタイビオ(20.0%)、ヒュミラ(16.0%)となりました。

最初に使用したAT 割合
レミケード 22.0%
エンタイビオ 20.0%
ヒュミラ 16.0%
シンポニー 9.0%
ステラーラ 8.0%
その他の薬剤 25.0%

上位には、比較的以前から使用されている薬が多く含まれています。

ただし、ここで注意したいのは、この結果が「現在、最も多く新しく処方されている薬」を示しているわけではないという点です。

今回の調査には、数年以上前に治療を開始した患者さんも含まれています。薬の使用状況を理解するには、「いつ治療を始めたか」という視点も重要です。

3.最近は抗TNFα製剤以外の薬も増えている

そこで、最初のATを使用し始めた時期ごとに、選ばれた薬の種類を分析しました。

その結果、抗TNFα製剤が占める割合は、5年以上前の70.8%から、直近3年では39.3%へと低下していました。

最初のATを始めた時期 抗TNFα製剤の割合
5年以上前(24名) 70.8%
3〜5年前(20名) 55.0%
直近3年(56名) 39.3%

つまり、5年以上前に初めてATを使用した患者さんでは約7割が抗TNFα製剤を選んでいたのに対し、直近3年では抗TNFα製剤以外の薬が約6割を占めていたことになります。

以前から使用されている抗TNFα製剤には、レミケード、ヒュミラ、シンポニーなどがあります。

一方、今回の調査全体では、抗TNFα製剤以外の薬として、エンタイビオ、ステラーラ、カログラ、ジセレカ、オンボー、リンヴォックなどの使用も確認されました。

近年は異なる仕組みで炎症を抑える薬が増え、潰瘍性大腸炎の治療選択肢が広がっていることがうかがえます。

ただし、これは抗TNFα製剤の効果が低くなったという意味ではありません。使用できる薬が増えたことで、患者さんの病状や治療歴などに応じて、異なる特徴を持つ薬が選ばれるようになってきた可能性があります。

なお、ここで挙げた薬剤名は調査全期間で使用が確認された例であり、直近3年の薬剤別順位を示すものではありません。

4.患者さんが薬を選ぶときに重視していたこと

では、患者さん自身は、最初のATを選ぶ際にどのようなことを重視していたのでしょうか。

今回の調査では、次のような結果となりました。

薬を選ぶ際に重視したこと 割合
寛解導入の効果 63.0%
寛解維持の効果 30.0%
ステロイド依存・無効・回避 22.0%
主治医の推奨・提案 22.0%
全身への影響の少なさ 19.0%
即効性 18.0%

※複数回答のため合計は100%になりません。

最も多かったのは、「寛解導入の効果」でした。症状を落ち着かせ、寛解を目指すことは、多くの患者さんにとって重要な目標であることがわかります。

一方で、寛解を長く維持できるか、ステロイドを減らせるか、全身への影響が少ないかといった点を重視する患者さんもいました。

また、薬によって患者さんが期待している特徴にも違いがみられました。

例えば、最初のATとしてエンタイビオを使用した患者さん20名では、55.0%が「全身への影響の少なさ」を重視していました。

一方、ヒュミラを使用した患者さん16名では、50.0%が「自己注射が可能であること」を重視していました。

このように、薬に期待することは、単に「効果があるかどうか」だけではありません。

病気をしっかりコントロールすることに加えて、日々の生活をどのように続けたいかも、治療選択に関わっていることがうかがえます。

5.薬を変更する患者さんも。2剤目には何が選ばれていた?

潰瘍性大腸炎では、最初の薬で十分な効果が得られなかったり、使用しているうちに効果が弱くなったりすることがあります。

その場合には、薬を変更することも治療の選択肢となります。

今回の調査では、AT使用経験者100名のうち57名が、2剤目のATを使用した経験がありました。

2剤目に選ばれていた薬は、ステラーラ(21.1%)、エンタイビオ(19.3%)、オンボー(12.3%)などでした。

最初の薬としてはレミケードやヒュミラなどが上位に入っていた一方、2剤目では異なる仕組みで作用する薬も多く選ばれていました。

ただし、どの薬からどの薬に変更するのがよいかは、患者さんの病状や以前の薬への反応などによって異なります。今回の数字は、特定の薬の効果が優れていることを示すものではありません。

薬の変更は不安を感じやすい場面ですが、「なぜ変更するのか」「新しい薬に何を期待するのか」を主治医と確認することが大切です。

6.選択肢が増えた今こそ、主治医との相談が大切に

今回の調査でもう一つ注目したいのが、治療を選ぶ際のコミュニケーションです。

最初のATを選んだときに、「ほかの薬剤は特に提案されなかった」と回答した患者さんは、全体の61.0%でした。

さらに、直近3年に初めてATを使用した患者さんに限っても、67.9%が「ほかの薬剤は特に提案されなかった」と回答していました。

もちろん、病状やそれまでの治療経過によっては、医学的に選択できる薬が限られることもあります。ほかの薬が提示されなかったことだけで、治療方針が適切でなかったとはいえません。

ただ、患者さんが治療内容を理解し、納得して選ぶためには、推奨された薬の特徴に加えて、「なぜこの薬が自分に合っているのか」を理解することも重要ではないでしょうか。

例えば、次のようなことを主治医に確認してみるのも一つの方法です。

  • 今回、この薬を勧める理由は何ですか?

  • ほかに選択できる薬はありますか?

  • 効果が十分でなかった場合、次にはどのような選択肢がありますか?

  • 通院頻度や投与方法について、生活に合わせた調整はできますか?

こうした質問を通じて、医師と患者さんが治療の目標や希望を共有していくことが大切です。

まとめ:自分に合った治療を考えるために

今回の潰瘍性大腸炎患者100名の調査からは、最初に使用されたATとしてレミケード、エンタイビオ、ヒュミラなどが多かった一方、直近3年では抗TNFα製剤以外の薬を最初に使用する患者さんが半数以上を占めることがわかりました。

また、患者さんが薬を選ぶ際には、寛解導入の効果だけでなく、寛解維持、ステロイドの回避、全身への影響、投与方法など、さまざまな点を重視していることも明らかになりました。

治療薬の選択肢が増えた今、重要なのは「ほかの患者さんが使っている薬が、自分にも最適とは限らない」ということです。

ほかの患者さんの治療経験を参考にしながらも、自分自身が治療に何を期待しているのかを整理し、主治医と相談していくことが、納得できる治療選択につながるのではないでしょうか。


調査について

本記事は、2026年5月に実施した潰瘍性大腸炎患者153名を対象とする処方実態調査のうち、AT使用経験者100名の回答、および処方開始時期別の追加分析結果をもとに作成しています。調査結果は回答者集団における傾向を示すものであり、日本全国の処方割合を示すものではありません。

また、本記事は治療選択に関する情報提供を目的としており、特定の薬剤の使用を推奨するものではありません。治療方針については主治医にご相談ください。