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みなさまこんにちは。米国登録栄養士の宮﨑です。今回は低フォドマップ(FODMAP)食の最新の研究についてお伝えいたします。


低フォドマップ食とは?


フォドマップとは、以下の頭文字を組み合わせた言葉となります。


Fermentable:発酵性の

Oligosaccharides:オリゴ糖(フルクタン、ガラクトオリゴ糖) 

Disaccharides:二糖類(ラクトース)

Monosaccharides:単糖類(フルクトース) 

And

Polyols:ポリオール(ソルビトール、マンニトール、イソマルト、キシリトール、グリセロール)


多くの人はこれらのFODMAPを問題なく消化・吸収することができます。


しかし、IBS患者さんやIBD患者さんの中には、これらのFODMAPの一部を小腸で吸収することができず、そのまま小腸に残ってしまうことがあります。


この吸収されずに残ったFODMAPが、小腸で水を腸管から吸い上げて下痢の原因になったり、大腸に移行して腸内細菌に発酵されることによりガスが発生し腹痛などの原因になることがわかってきています。


これらのFODMAPを取り除く食事療法が低フォドマップ食です。


詳しくは以下の記事をご覧ください。


(基礎編)ホットなトピック!IBDと低フォドマップ(FODMAP)食

 

(実践編)IBDと低フォドマップ(FODMAP)食


さてFODMAPは大きく5つのグループに分けることができます。


フルクタン: 小麦製品、もも、にんにく、たまねぎなど

ガラクトオリゴ糖: インゲン豆などの豆類など

ラクトース: 牛乳などの乳製品など

フルクトース: りんご、さくらんぼなど

ポリオール: カリフラワー、ソルビトールなど


低フォドマップ食のプロセスは、一度この5つのグループをすべて取り除き消化器症状が改善するかを確認し、実際に症状が改善した場合に、一つ一つのFODMAPグループに含まれる食材で消化器症状が出ないかを確認するという非常に時間と手間がかかるものです。


そのため、低フォドマップ食を続けるには管理栄養士のサポートが必要である場合も多く、途中で中断してしまう患者さんも多くいることから、より簡単に短期間で実行できる簡易版の低フォドマップ食が模索されています。


個別のFODMAPグループのIBS症状への影響を評価した試験


5月に行われたDigestive Disease Week 2021 Annual Meeting(DDW2021)では、一つ一つのFODMAPグループが与える消化器症状を比較した研究結果が報告されました。


45名のIBS患者が試験にエントリーし、FODMAPの制限フェーズで消化器症状が改善した25名が10週間の再導入期間を行い、5つのFODMAPグループで消化器症状が出ないかを確認しました。


その結果、フルクタンで腹痛の悪化が顕著に見られ、一番初めに再導入したFODMAPでは、フルクタンとガラクトオリゴ糖で腹痛との関連が確認されました。ちなみにこのフルクタングループに含まれる代表的な食材はたまねぎとニンニクとなります。


これまで、個別のFODMAPグループがIBSの消化器症状に与える影響が異なることは経験的に医療従事者の中で知られていたものの、科学的な根拠はありませんでした。


よって今回の試験で改めて個別FODMAPグループが消化器症状に与える影響の違いが研究によって示唆された形となります。


終わりに


今回の研究では、5つのFODMAPグループそれぞれでIBS症状への影響が異なることが示されました。今後はこの研究をベースに、より簡単に実行できる低フォドマップ食の開発・研究が期待されます。


また今後アジア人や日本人での低フォドマップ食の研究を期待です。今後もコミュニティでIBDに関連する食事療法の研究があれば紹介していきたいと思います。


参考文献

Assessing Impact of Individual FODMAPs on IBS Symptom Severity