米国登録栄養士の宮﨑です。
今回は、前回の12月のオンラインセミナーでも質問の多かったIBDと脂質について少し詳しく紹介できればと思います。
活動期の脂質
活動期は一般的に消化管への負担を避けるために低脂質食が良いと考えられています。具体的な低脂質の量について明確な科学的根拠はありませんが、日本の病院では20-30g/日程度の低脂質食が提供されることがあると思います。
寛解期の脂質
寛解期の脂質の量については特に日本では先生によって見解が分かれることがあると思います。
日本で脂質の制限が推奨されるようになった背景としては、平成10年の厚労省研究班の報告書の中で、成分栄養剤と食事指導による脂質摂取量の調整で、1年後の再燃率は脂質20g群:10%、脂質30g群:57%、脂質40g群:63%であり、脂質摂取量20gで再燃率が低いことが示唆されたことが背景になると考えられます。
ですが、上記報告以外に、脂質の総摂取量がIBDの再燃に影響を及ぼしたことを示した研究は海外含めて見当たらず、海外のガイドラインでも脂質の総摂取量の推奨をおこなっているガイドライン等はありません。
むしろ過剰な脂質の制限が、食事の選択の幅を狭めてしまうことにつながり、栄養摂取の不足やQOLの低下につながることが懸念されます。
もちろん日本の研究成果としては重要なものですが、更なる研究が期待されるといったところでしょうか。
海外では寛解期は脂質の種類がポイントに
では海外ではどのような推奨が行われることが多いのでしょうか。IBDの研究を国際的にサポートする機関であるIOIBD(The International Organization for The Study of Inflammatory Bowel Disease)が発行しているガイドラインでは、脂質の種類に注意するよう記載があります。https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32068150/
具体的には、赤肉、パーム油、ココナッツ油、トランス脂肪酸の摂取を減らし、オメガ3が含まれる魚の摂取量の増加を推奨しています。アメリカでは実際の臨床でもそのように指導されることが多いと思います。
脂質の種類については、以前まとめていますので以下の記事をご参照ください。
https://gcarecommunity.com/article/102
もちろん、これまで無理なく脂質を制限することでうまくコントロールできていた場合に無理に脂質の摂取を増やす必要はないと思います。特にIBDでは人それぞれで最適な食生活が異なることは多いからです。
ですが、もし脂質の制限が過度のストレスになっていた場合や脂質の制限が食事のバラエティを増やすことの制限になっていた場合などはぜひご参考にしていただければと思います。