質問&おしゃべり
田辺三菱製薬株式会社様とグッテ共催のオンライン就労イベント
「IBDとともに働き続けるコツ よりよいキャリアを築く「伝え方」の工夫~治療との両立をコミュニケーションから考える~」
の実施レポートです。
このイベントは2024年9月1日に行われました。レポートの投稿が遅くなってすみません。
今回のセミナーは、就労サポートの経験豊かな共愛学園前橋国際大学 大谷氏の講演、患者登壇者と大谷氏によるディスカッションの二部制で開されました。
【イベント内容】
第一部:「よりよいキャリアを築く「伝え方」の工夫~治療との両立をコミュニケーションから考える~」
講師:共愛学園前橋国際大学 大谷 翔氏
第二部:IBD患者さん2名と大谷氏のディスカッション
(事前にいただいた質問についても回答しています)
【登壇いただいたIBD患者さん】
過去にご寄稿いただいた体験談
Jackさん:IBD発症から海外生活するまでの体験談(患者体験談・Jack UCさん)
くにさん:IBD〜学校生活、就職、結婚、そして将来へ〜(92さん)
【イベントレポート】
第一部:「よりよいキャリアを築く『伝え方』の工夫~治療との両立をコミュニケーションから考える~」
講師:共愛学園前橋国際大学 大谷 翔氏
本セミナーでは、参加者のライフステージに応じて発生する治療と社会生活との折り合いの場面を具体的に取り上げながら、よりよい伝え方を学びました。
「アサーティブ・コミュニケーション」の考え方をベースに、相手を尊重しつつ、自身の思いや希望を率直に伝えるための心構えやスキルを学習しました。
また、トイレの頻回利用や体調不良による欠勤、配慮の必要性など、実際にIBD患者さんが直面しやすいケーススタディを通じて、状況に応じた表現の工夫や交渉のヒントが共有されました。
参加者の皆さまからは、「実際の伝え方を考えるよいきっかけになった」「働くうえでの自己開示について整理できた」といった声が多数寄せられました。
第二部:IBD患者さん2名と大谷氏のディスカッション
1.仕事と治療の両立
Jackさんは、技術職としての働き方の中で、出張時の食事制限や月1回の通院などを無理なく自己管理されています。
一方くにさんは、看護師時代に体調の波との両立が難しく、保健師や事務職に転職。
現在は、座って働けること・自分で休憩調整できることが体調の維持に役立っていると話されました。
どちらの方も「自分の体調に合う働き方を模索する姿勢」が大切だと強調されていました。
2.就職・転職時の病気の伝え方
病気をどこまで・どう伝えるかは相手や状況に応じて工夫が必要とされています。
Jackさんは、ネガティブな要素を一度に出し切ったうえで、実績や意欲をポジティブに伝えるスタイルを実践。
「採用側の不安をどう払拭するか」を常に意識されていました。
くにさんも、病気の説明後に「業務遂行が可能であること」や「これまでの経験がどう活かせるか」までをしっかり話しているとのこと。
準備段階でQ&A想定や表現の練習をしておくことが、自信につながると語られました。
3.治療費と収入のバランス
くにさんは、育児・治療・家計のバランスをとるため、パート勤務を選びつつFPの勉強やNISAなどで将来に備えています。
医療費による家計への影響を実感しており、「治療費くらいは自分で稼ぎたい」と考えているとのこと。
Jackさんは、医療費補助のある日本ではそこまでの不安はないものの、海外駐在時には「会社に負担をかけている」という意識があったそうです。
そのぶん、成果で貢献したいというモチベーションにもつながっているようでした。
4.生活での工夫とコミュニケーション
くにさんは、睡眠・絶食・予定調整などで体調を整え、外出時は「前もって相談し、準備期間を確保する」スタイルを実践中。
家事の優先度を決めて無理のない生活を意識されており、家族とのコミュニケーションも工夫されています。
Jackさんは食事の影響が少ないことから、特別な制限はなく、むしろ健康意識が強まったと語られました。
健康診断や適度な運動などを通して、病気以外の健康を維持する努力をされているのが印象的でした。
5.職場での開示と対応
Jackさんは、上司には早い段階で説明する一方、同僚には必要があれば自然に話す程度とのこと。
一方くにさんは、病気に理解のある会社で働いており、体調の見える化や業務引き継ぎマニュアルの整備も行っているそうです。
看護師時代の失敗経験から、今は「相談の前に提案を持っていく」ことを大切にされていました。
信頼できる人への先行相談や根回しの重要性についても共有されました。
6.海外勤務への挑戦
Jackさんは大学時代からの夢だった海外駐在を、病気を抱えながらも実現。
不安もあった中で、上司や産業医に相談しながら道を切り拓いたそうです。
病状が安定していた時期だったため、周囲からの反対も少なく、「実績で不安を払拭できた」とのこと。
病気があっても夢をあきらめない姿勢が、参加者に強い印象を与えました。
7.体調管理と働き方のバランス
くにさんは「倦怠感」を黄信号と捉え、仕事や家事の量を調整することで悪化を予防しています。
「やらない家事を決める」「育児も休むときは休む」といった選択が、自分を守るコツとのこと。
Jackさんは「これといったトリガーがない」と語り、職場調整はしていないものの、変化には敏感でいるようにしているそうです。
アメリカ勤務時は、体調が悪くても周囲に理解されやすく、安心して仕事を続けられたと話されました。
8.妊娠・育児と病気
くにさんは妊娠前にパートへの転職を相談し、妊娠中も悪阻による休職などの対応を職場に丁寧に説明しました。
病気での休職よりも、妊娠・出産のほうが職場の理解が得られやすかったという気づきがありました。
Jackさんは症状が比較的安定していることから、育児への影響は今のところ少ないとのこと。
将来的な不安もあるものの、現状は「できる範囲で無理なくやる」姿勢をとられています。
9.Q&A(参加者からの質問)
トイレの工夫では、「自宅に複数のトイレを設置」「使ったら必ず掃除」などの実用的なアイデアが出されました。
くにさんは「お互いさま」の精神で、家庭内でも気負いすぎず対処しているそうです。
また、「病気と関わる仕事」への興味も語られ、将来的に患者支援に携わりたいという思いも共有されました。
Jackさんは「海外赴任における病気の伝え方」について、自信と実績をセットで伝えることの重要性を強調されていました。
10.IBD患者へのメッセージ
Jackさんは「病気が理由で落とされたかはわからない」としながらも、あきらめず挑戦し続ける大切さを語られました。
病気を理解してくれるキーパーソンと出会えれば、状況は変わると信じているとのこと。
くにさんは「入院を繰り返しても、働き続けることは可能です」と、自身の経験をもとに力強く励まされました。
「今日のイベントが、誰かにとって希望のきっかけになれば嬉しい」という想いが共有され、会は温かい空気に包まれました。
今後もグッテでは疾患を持つ方々が安心して学び・働くための実践的な支援を継続してまいります。
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