今回は、まみさんから頂きました以下の質問にお答えしたいと思います。
<質問>
グルテンフリーはIBDに効果があるのか知りたいです。
<回答>
結論から言うと、まだグルテンフリー食がIBDの寛解維持や消化器症状の軽減などに対して効果があると言う研究結果は出ていません。よって、IBDの診療や食事療法に関する海外のガイドラインにおいても推奨されておらず、医師や管理栄養士がIBD患者に対して特別に推奨することは一般的にはありません。
IBDとグルテンフリー食の概要に関してはこちらの記事をご覧ください。
グルテン不耐症/過敏症(Non-celiac Gluten Sensitivity)とIBD
一方、近年特に海外でグルテンフリー食が流行っているのは、グルテン不耐症/過敏症 (Non-celiac Gluten Sensitivity)と呼ばれる症状に対して注目が集まっていることが背景にあります。
これはテニスプレーヤーのジョコビッチの本で話題になった症状で、セリアック病(グルテンに関する遺伝性の自己免疫疾患)や小麦アレルギー以外の患者さんで、グルテンが含まれる食事を食べると、腹痛・下痢などの消化器症状が出る疾患です。
このグルテン不耐症については最近研究が始まったばかりで明確な診断方法や治療などもまだ確立されていないのが現状です。しかし多くの方が、グルテンが含まれる食事を食べると消化器症状を出ることが報告しています。
実際、過敏性腸症候群(IBS)、IBD患者、それ以外の消化不良患者(コントロール)に対して、グルテン不耐症有無の自己報告を分析した研究では、IBS患者とIBD患者では、コントロール群と比べて、優位にグルテン不耐症があると答える患者が多かったことが確認されました(1)。しかしこの研究はあくまで自己報告をベースとした研究であるため、実態の解明にはさらなる研究が必要です。
グルテンフリーを試す場合の留意点
グルテンが寛解期の消化器症状の原因かもしれないと感じられている方については、グルテンフリー食を試し実際に消化器症状が改善するのか確認することも選択肢になることがあります。
一方、グルテンを含む食品にはIBD患者にとって重要な栄養素であるビタミン・ミネラル・食物繊維などが含まれます。
グルテンフリー食を試されて特に効果を感じられない場合はグルテンフリー食を止めるか過度な制限は控えましょう。
グルテンを完全に取り除いてから消化器症状の改善が見られる期間は人によりますが、長くても2-3週間程度であることが一般的です。
その他不明点等あればお気軽にコメント頂ければと思います。
(1) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25719528/